過去から未来へ

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「部長がいるからって諦められるぐらいの気持ちなんでしょ!」 叫ぶように言った日葵を、怖いぐらいに真剣な壮一の瞳が射抜く。 「そんなわけあるか! お前といることが苦しくて、でも会いたくて、そんな気持ちお前にわからないだろう。でも、俺の強引さでさんざん日葵を傷つけてきた。これ以上俺の身勝手でお前の幸せを壊すわけにいかないだろう! だから俺は……」 壮一は最後は振り絞る様に言った後、掴んでいた日葵の腕を離し、ツメが食い込むほど手を握りしめる。 そんな壮一に、日葵は耐え切れず壮一の腕の中に飛び込んだ。 そ壮一の腕が反射的に、日葵を抱きしめようとするも、躊躇するように元あった場所へと戻る。それでも日葵は壮一に言葉を続けた。 「じゃあ、ずっと捕まえていてよ。もう私が二度と不安にならないように。崎本部長には謝ってきたんだから。あんな、あんな素敵で優しい人なのに」 子どもの頃のように泣きじゃくる日葵に、壮一は少し困ったように日葵を見つめる。
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