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それに、日葵には気がかりがもう一つあった。
「長谷川さん。今年はお世話になりました」
可愛らしい笑顔でバッグを持って日葵に挨拶に来た柚希に、日葵も笑顔を向ける。
「柚希ちゃん、あのね」
「長谷川さん、私は何も言ってませんよ」
「え……?」
その意味が解らず日葵は、柚希に聞き返すと、柚希はフワリと笑顔を向けた。
「私がチーフに抱いていたのは、ただの尊敬だけです。なのでそれ以上は言わなくていいですよ」
きっとあのパーティーの日から色々噂になっていたのだろう。それを知り、先にこうして自分のことを気にしてくれる柚希に、日葵は感謝しかなかった。
「柚希ちゃん、お疲れ様」
ゆっくりと言葉を発した日葵に、柚希はぺこりと頭を下げるとそのままフロアを出てってしまった。
そんな柚希の後姿を見て、日葵は小さくため息をつく。
(柚希ちゃんの方が大人だな……ありがとう)
自分の気持ちがわからず、いろいろな人を傷つけてそれでも譲れない思いを知った。
これからはもう迷いたくない。そんな思いでいると、不意に後ろに気配を感じて日葵は振り返る。
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