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それは言葉にならず、日葵はパクパクと口だけをしてしまう。ちょうど赤信号になり車が止まると、壮一は弄んでいた手をギュッと握りしめ、助手席に身を乗り出す。
「壮……」
「もっとこの関係に慣れろよ」
妖艶で綺麗すぎる顔が自分だけに向けられている。それだけで日葵の鼓動は煩いぐらいに跳ね上がってしまう。どうすることもできず目を見開いていると、そっと優しいキスが落とされる。
そっと唇が離れ、綺麗な壮一の瞳が日葵の瞳をとらえて離さない。もう限界と思うほどに胸は高鳴るが、この熱が嬉しくて初めての感覚に日葵は戸惑いを隠せなかった。
信号が青に変わり、何事もなかったように壮一が車を走らせると、日葵は窓の向こうの夜景に視線を向ける。
(この年で本当の恋を知るって……)
これからの自分がどうなるのかなど、日葵自身にもわからず心の中で大きなため息を付いた。
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