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また静寂が訪れ、気まずい空気に日葵は息が詰まりそうになる。
「ここで降ろして欲しい」そう言えればいいたいところだが、帰る場所は同じ。
この何年かの会わなかった時間を、簡単に埋められないのは、あまりにもそれ以前が濃い時間を過ごしたせいかもしれない。
あれだけ生まれた時から一緒にいたからこそ、日葵には大人になった今、壮一とどう接していいのかわからなかった。
それは壮一も同じなのかもしれない。
あんな別れ方をしていなければ、思い出話や、会わなかった日の話をできたのかもしれない。
でも、今の二人にはそんな簡単に話ができない。そんな空気が流れていた。
無音だった車内に耐え切れなくなったのか、壮一がオーディオのボリュームを上げた。
車内から流れたのは、聞き覚えのあるメロディーだった。
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