優しくしないで

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「あれ?この曲……」 どこかで聞いたっけ? 日葵は記憶を辿るも思い出せず首を傾げた。 切なくて甘い、オーケストラで奏でられるその音楽は、驚くほど美しかった。 「エンディングにしようと思ってる」 すぐに今開発中のゲームの事だとわかり、日葵は耳を傾けた。 「すごく素敵」 素直に零れ落ちた言葉に嘘はなく、なぜか泣きたくなる。 壮大なRPGゲームのラストを飾るにはふさわしい曲だと思った。 戦い、人間模様、それらを美しい映像と、音楽が彩る。 そう思うと、日葵が改めて壮一のすごさを感じた。 「やっぱり、天才だね」 自然と零れ落ちた言葉に返事があるとは思わなかったが、壮一から意外な言葉が降ってきた。 「それなら日葵のお陰だろ」 「え?私の?」 あまりにも意外な言葉に、日葵は自分の耳を疑った。 「俺がピアノを始めたのは日葵の為だよ」 初めて聞く壮一の話に、日葵は啞然として壮一をみた。 「どうして?」 その問いに、久しぶりに見る壮一の笑顔に日葵はドキッとした。 「小さいころ日葵がピアノを弾くと笑ったから」 その言葉に、日葵の心はギュッと潰されるような気がした。
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