優しくしないで

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それ以上会話することなく、すぐにマンションへのエントランスに着き、日葵は壮一をチラリとみた。 (どうしてエントランス?駐車場は地下だよね……) そんな思いから日葵は、小さな声で問いかけた。 「チーフ……車は停めないんですか?」 「いいから、長谷川早く帰って寝ろ。顔色が悪い」 日葵を見ることなく言った壮一の言葉に、日葵は言葉を止めた。 長谷川と呼ばれたら、もうなにも言えず日葵は車を降りた。 「ありがとうございました」 呟くように言った日葵に、壮一は何か言いたそうな表情を見せたが、そのまま視線を逸らすと車はすぐに元来た道へと消えていった。 「まだ仕事残ってたんじゃない……」 とっくに見えなくなった車に、日葵は独り言ちた。 壮一の優しさに気づきたくなくて、日葵はキュッと踵を返すと急いで自分の部屋へと帰った。
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