開放

2/7
110人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「ダン連れてきたぞ」 ジョージが連れてきたのは黒髪のロン毛の女性だった。 「社会学科のジェシーパーカーさんですね」 「ええ、私の事知っているの?」 「はい、何度も教室で見かけています」 亮は回数を覚えていたが気味悪がられるので 回数は言わなかった。 「バーバラ・スワンさん、医学部ですね」 「ええ、そうよ。私も知っていたの?」 「細菌学と生物学の講義で何度か」 「経済学部の人がどうして?」 「あはは、日本の大学は薬学部だったので他にも薬学と 微生物学の講義を取っています」 「僕の事は知っていますか?」 「はい、マイケル・リオン僕と同じ経営学科ですね。 お父さんが全米有数の運送会社の社長ですよね」 「知っていたのか」 マイケルは思わず亮に握手した。 「私は?」 「スワンさんのお父さんはフィアデルフィアで 一番大きな病院の二人娘ですね」 「僕は?」 「ジョージはシカゴの貿易会社の息子さん」 「おお、すごい!」 亮は全米の学生のデータを すべて覚えていた事が役立っていた。 「私は?」 ジェシーが心配そうに聞いた? 「あなたはボストンタイムズのお嬢さんじゃないですか。 お兄さんが二人、長男はハーバード大学の経営学科、 次男はUCLAの映像学科ですよね」 「なぜ知っているの?」 「えっ?」 亮は個人情報を話し過ぎて反省していた。 ジェシーは亮の手を引いた。 「すみません」 「ううん、いいけど。他の人に言わないでね」 「家族の事?会社の事?」 「両方よ」 亮はボストン・タイムスが雑誌社を買収したり、 ニュース番組を作る情報も聞いていた。 「逆に私の方から質問がある」 「何でしょうか?」 「團亮さん、あなたは日本の宝石屋さんの息子でしょう。 それがどうして薬学部を出ているの?」 「薬で人を救うためです」 亮はDUN製薬の関係を説明すると大げさな事になるので それは言わなかった。 「じゃあ、どうしてうちの大学の薬学部に入らなかったの?」 亮にとっては薬学の勉強は終了して研究は自分で出来たが、 それを言ったらおかしくなる事を知っていた。 「あはは、薬は飽きたのかもしれません」 亮が笑った。 「面白い人ね、製薬会社の経営でもするの?」 ジェシー・パーカーはこの日を境に亮に興味を持った。 「ところで、誰と誰が付き合っているんですか?」 亮は四人に聞いた。 「あはは、ダン誰も付き合っていないよ。 みんなそれぞれ他にパートナーがいる」 アメリカでは大学に入る頃までには 決まった相手がいる人が多い。 「ああ、そうなんですか?」 「それより、彼女を紹介してくれよ」 「パティです。貿易会社に勤めています」 パティは亮の彼女に間違われて嬉しそうに四人と握手をしていた。 「それで、うちの図書館の事件の真相は?」 ジェシーが興味深そうに聞いた。 「ごめん、それに関しては警察と大学に口止めされている」 「でも、ダンが事件を解決したんだろう?」 「事件を解決したのは警察です。僕は手伝っただけです」 「手伝っただけでもすごい!」 ジョージが亮の肩を叩いた。 「まあ、いつか真相を私の手で・・・」 ジェシーは笑って亮の顔を真剣に見つめていた。 「真相は無いですよ」 図書館爆弾事件にはテロリストジャックモーガンが 絡んでいたので ジェシーはそれ以上知るべきでは無いと思っていた。 「亮、踊ろう」 スローテンポの曲が流れるとパティに誘われた。 「えっ、どんな踊り?ワルツ?タンゴ?ルンバ?」 「何言っているの、普通のチークよ」 「チークってステップは?」 「まったく、手を握り合って歩くように ゆっくり体を揺らすだけよ」 「ああ、なるほど・・・」 亮は左手をパティの腰に回し右手を握った。 「もっと顔を近づけて!」 背筋を伸ばしたままの亮にパティは注意をした。 「はい」 亮が周りの様子をうかがうと 時々キスをしているカップルがいて 恥ずかしく思っていた。 「ねえ、そろそろカラオケだよ」 「カラオケってアメリカに有るんですか?」 「うん、歌いたい歌をリクエストして前に出て歌うの」 元々カラオケはスナックでお金を払って歌うシステムで、 それを空き地にコンテナを置いて カラオケをセットしてカラオケボックスが出来 都市型に進化していったものだった。 コンテナを使った理由は建設許可がいらず 税金も払う必要が無かったために、 当時空き地を持っていた地主は売り上げを伸ばしていた。 日本人は下手なものは人前でやらない 人種なので個室型が発展したのかも知れなかった。 「ああ、スナックですね?」 「スナック?食べ物?」 そこにパティの友達が参加してパティは 亮を自慢げに友達に紹介していった。 そこへスワンが来て亮の耳元で話しかけた 「亮、パティと付き合っているの? なんかギクシャシャクしているけど」 「いいえ、付き合っていません、ただの友達です」 「じゃあ、私でも良いのね」 バーバラ・スワンが微笑んでいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!