開放

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開放

亮は尚子に電話を掛けた。 「こんにちは、亮です」 「お久しぶり、今どこ?」 「今夜そちらに泊まれますか?」 「大丈夫です」 「すみません」 「シェアをしているので当たり前よ」 「今からどこかへ出かけませんか?」 「ああ、でも・・・」 尚子は手持ちがなかった。 「大丈夫です。日本から帰ったばかりなのでお金は有ります。  何かごちそうします」 「じゃあ、ステーキを食べたい」 「OKです」 二人はアパートから歩いて 10分ほどのステーキハウスに入った。 「最近、京でのアルバイトは?」 「やっているけど、レッスン料が高くて・・・」 芸能プロダクションの無いアメリカではレッスン料は 全て自費負担しなければならなく そのリスクは大きい。 スターを目指す人は自分の力で オーディションに受からなければならなく、 レッスンを受ける姿は真剣そのものだ。 「それにニューヨークは東京に比べて2倍以上の 物価ですから、生活も大変ですね」 「ええ」 尚子のアイドル時代の蓄えはあとわずかだった。 亮は尚子の才能を信じており、 何か援助する事を考えていた。 文明と稼いだお金は手元にあるがそれを ポンと出すわけには行かず悩んでいた。 「そうだ、YouTubeやりませんか? 元アイドル白尾尚子のニューヨーク奮闘記、  クリックと、視聴時間で報酬があるはずです」 「ユーチューバーね、考えてもみなかった」 「尚子さんは暫定で一万人のファンがいるとして、 アメリカにファンが出来れば生活の足しになると  思います。ひょっとしたら有名な プロデューサーの目に止まるかも」 「うん、やってみる」 「編集とupは僕がやりますので、 毎日データを送ってください」 「いいの?」 「はい、夏になったらしばらくニューヨークに 居ますので、撮影を手伝います。 それと夕食は京で食べてください。 後でまとめて払ってもらいます」 亮が言い終えると尚子は目に涙を浮かべていた。 「何かまずい事言いました」 「ううん、嬉しい」 その夜二人は日本人向けの観光案内、 ダンス、ボーカルレッスン風景、 ファッション案内、フード紹介まで流す事にした。 「今度アメリカンアイドルを受けようと思う」 「頑張ってください、優勝できなくても ベストエイトに残ればツアーに参加できます。 ただ日本人なのでファン投票が シビアかもしれませんけど・・・」 「はい、覚悟しています」 亮はその夜、尚子の部屋に泊まった。 裸にロングティシャツの尚子はお酒を飲みながら 何度も脚を組みなおし太腿を露わにしたが、 亮は何の反応もしなかった。 「亮、なんか変わった」 「ええ、ある人に言われて自分を抑えるのを やめたんです。心の解放かな」 「それ大切だよ。それを言ったのは 誰?牧師さん、お坊さん?」 「うん、ゲイバーの人です」 「・・・やっぱり」 尚子は自分が惨めになるだけなので 亮を男として思う事を 諦めることにした。 「亮、ずっと友達でいてくれる?」 「はあ、はい。もちろん」 亮は突然言われて驚いたが 尚子に好きな人が出来たのだと思っていた。 亮と尚子は誤解のまま異性としての 意識を消して行った。 尚子にとって亮がゲイだろうがストレートだろうが、 亮の優しく誰に度も愛される人柄を好きな 事には変わりがなかった。 亮は二日間尚子の映像を撮ってボストンに帰って行った。 その週末パティからパーティの誘いがあった。 「週末にパーティが有るけど来る?」 「久しぶりに会いましょうか?」 パティは亮に久しぶりに会えることが嬉しかった。 パーティの会場は200人ほど入れるパブで 夏休み前の学生がたくさん来ていた。 「久しぶりパティ」 亮はパティと握手をした。 「握手?」 「ん?」 亮は握手は礼儀作法と信じていた。 亮はパティの従妹ジェニファーと 殺人事件を解決した事を伝えた。 それを聞いたパティは 不機嫌になりしばらく黙っていた。 「いいなあ。私も刑事になりたい、 ジェニファーが羨ましい」  「ハーイダン。珍しいなあ 君がパーティに出るなんて」 ハーバード大学のジョージ亮に声をかけてきた 「うん、これからパーティがあったら 誘って友達を作ろうと思っている」 「本当か?君に興味がある 奴たくさんいるから喜ぶぞ!」 男は亮の肩を叩いた。 「そんなにいるんですか?」 「当たり前だ。ハーバードに 君を知らない奴はいない」 「亮!変わったね。自分から パーティに出るなんて」 「うん、心を開放する事に決めたんだ」 亮は大西に言われた事が心に響いていた。 「良かった。これから遠慮なく誘うね」 「うん、ありがとう」 亮は日本で犯人を見つける為に秋田へ行った事や 体育館でお掃除のアルバイトをした話を した。 「面白い!私日本に行きたい!」 「ぜひ来てください」 「うんうん行く!」 そこへハーバード大学の学生が四人やって来た。
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