二人の生活

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男は赤ん坊の柚子を抱き抱え外に出ると外は天気が良く雲一つ無い位の晴れだった。歩きだし何処か働き手は無いかと男は歩いては人を見つけ断られの繰り返しをしているとすっかり夕方になってしまった。すると綺麗な女性の人で腕に赤ん坊を抱えながら男に声をかけた。 「あの、大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫です。少し歩き疲れただけです」 「何かお困りでしたら言ってください。その様子から見ると結構大変ですね」 「………実は働く所を探しているんですが、中々相手にされず」 男は今日の事を全て話すと女性の人は少し悩んでいる顔をしてからスカートのポケットに入っている携帯を取り出し誰かに電話をかけた。 「もしもし、お父さん? 実はね男の人が困ってて話を聞いたら働く所を探しているんだって。お父さんの所って人手不足だったよね。……そう、それであそこなんだけどまだ残ってる? ……本当、ありがとう。……じゃあ今から家に連れて行くね。……うん、分かった。じゃあ、私の家に行く前に名前を聞いても良いですか?」 「え? お、俺の名前は……藤阪、藤阪 佐助(ふじさか さすけ)と言います。この子は俺の娘の柚子(ゆず)です」 男は一瞬本名で言おうか悩み偽名を名乗った。女性は満足そうに笑い女性も名乗り始めた。 「私の名前は山崎 桔梗(やまざき ききょう)と言います。この子は私の娘の恵美(めぐみ)。今から私の家に行って父に藤阪さんを会わせようと思うので来て下さい」 「ど、どうしてそこまでしてくれるんですか?」 「同じ親として、困ったときはお互い様ですよ。という事で早く行きましょ。父も待ってますし」 佐助の手を引っ張り少し強引に連れていく桔梗は何処か楽しそうにしていた。佐助を連れて歩いていると赤ん坊を抱き抱えた二人の前には一軒家があり桔梗は「ただいま」と大きな声で家に入っていった。佐助は柚子を抱き抱えたまま家の前に突っ立っておりどうしたら良いか分からずそのまま硬直していた。 「何をしているのですか佐助さん。早く入って下さい」 「お……お邪魔します」 佐助は恐る恐る家に入り桔梗が案内される部屋に行くと着物姿で座っている少し厳つい老人がそこにいた。佐助はオドオドしながら座ると桔梗は「私は飲み物持ってくるので佐助さんは気軽にしてね」と言い恵美を連れて行ってしまった。 「君が娘の言っていた人かな」 突然話しかけられ佐助は驚きながら「は、はい」と答えた。すると柚子が突然泣き出してしまい佐助は慌てながらあやすが全然泣き止まない。 「ちょっと貸してみなさい」
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