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私はその絵を見るたびに、解けない謎に対する微かないらだちを募らせずにはいられなかった。
誰の眼鏡だろう。
意味深だ。
稚拙な謎かけに過ぎないんだろうけど。
こんなことを思うのは、進路選択に起因するストレスからの逃避なんだろう。
それとも、才能あふれる作者への嫉妬か。
(この彼の眼鏡を外した顔も、ちょっと見てみたいな)
不意に、早春の鋭い西日がキラッと私の目に射し込んだ。
「あっ」
私は腕時計を確かめた。
今日は、進路指導室で担任の宮野先生が待っているのだった。
約束の時間が迫っていた。
私は眉間にしわを寄せて立ち上がった。
私は本当は、絵を描くのが好きなのだ。
勉強のためと思い、高校に入ってからその情熱は心に秘めていたのだが。
いざ進学先を考える段になり、こんなに苦い思いをするとは思わなかった。
画廊にいてさえ、好きな道に進んだ先輩たちへの妬みを感じてしまう。
私は私で、勉強に打ち込んで来たのに。
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