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私はもう一度「木漏れ日」に目をやり、息をついて立ち上がった。
普段明かりを点けない画廊の作品は、既に薄暮の闇に深く沈み始めていた。
今の私には、日暮れが世界を覆い隠すことすら、つまらない悩みに答えてやる義理はないと突き放されている気分だった。
「あーあ」
投げやりに通学鞄をつかみ、小走りに「安田さん」の前を過ぎて右に曲がろうとしたとき、鞄からだらしなく垂れた肩紐が、曲がり角にある胸像の展示ケース脇のホックと、私の足に絡まった。
これは強引に引っ張っては、年代物の展示ケースに傷がついてしまう。
私はあわてて立ち止まり、振り返ろうとした。
が、元々の運動音痴に加え、青春を勉強で鈍らせてきた体は、急には止まれなかった。
私はよろめき、足に絡みついた紐がピンと緊張した。
私はとっさに張力を求めようとし、自重とよろめきの加速度に絶望せざるを得なかった。
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