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首切丸は二百年前、戦国の世に、岡田家の先祖が、いくさでの勝利を鬼神に祈った刀だという。先祖はそのおり、自分の妻と娘の首を切って、鬼神への捧げものとした。
そのかいあってか、先祖は幾多のいくさ場を血まみれになりながらも生きのび、敵の武将の首をいくつも取った。その功により、岡田家は足軽から足軽大将にまで出世した。
しかし、戦国の世が終わり、二百年の間に、岡田家はたび重なるしくじりのせいで徐々に石高を削られ、いまでは足軽身分の同心にまで落ちぶれている。
岡田家では、これを首切丸に憑いた怨念のせいだと解釈していた。
かと言って、刀を処分すれば、どのようなたたりがあるかわからない。
ゆえに「触らぬ神にたたりなし」ということで、代々刀を家の奥にしまって、外に出さぬようにしてきたのである。
そんな妖刀を、なぜ二百年ぶりに使うことになったのか。
それを説明するには、ひと月前にさかのぼらなければならない。
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