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思いがけないことを言われて、いったんは言葉を詰まらせた源之進だが、すぐに言い返した。
「だから、ただの見間違いだと申したであろう。斬ったのはおいくではない。とが人の権蔵だ」
「さようですか、権蔵と……」
おしのの声が、冬枯れの梢を吹きぬける木枯らしのように、すっと冷えていく。
おしのが病人のようにこうべを垂れた。
ますます行燈の火がゆれ、部屋のなかをおしのの影がただよう。
「権蔵とは……このような顔をしておりましたか」
そのとたん、源之進は、ぐえ、とうめいて身を引き、尻をついた。
おもてを上げて、再び源之進のほうを向いたおしのの顔は、いまや権蔵のそれになっていたのである。
「へっへっへ、だんなぁ……」
ゆらりと、まるで薄い紙が立ち上がるように、おしのが――いや、権蔵が、ひざを立てて立ち上がろうとする。
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