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「いいなぁ」
私は思わずリナさん達の背中を見てそう口にしていた。それにリクがすばやく聞き返す。
「お花見が?」
「あ、うん。お花見もだけど、男子と女子で仲良さそうなのってすごいなって。大学生になると皆ああなのかな」
「……確かに小学生や中学生じゃムリだ。女子とわざわざでかけようとは思わない」
「ちょっと、私やヨリちゃんも女子なんだけど」
「二人は別」
今現在女子二人に挟まれているリクのくせに、ひっかかることを言う。ヨリちゃんも文句いいたさげにリクをじっと見ていた。
でも多分、リクからしてみれば商店街の人は男子か女子かというよりは『商店街の人』なんだろう。
でもきっと他の人はそうではなくて、リクは私達と関わることで嫌な思いをいっぱいしたはずだ。ひやかされるくらいならまだいい。でも私達と遊ぶだけでリクを男らしくないと悪く言う男子がいる。男らしくなくてなにが悪いんだ、そもそも女の子と遊ぶ事のどこが男らしくないっていうんだ。
思い出してむかむかした私をなだめるようにヨリちゃんは語る。
「普通、小学生は男女で離れてるものだよ。でも中学生あたりで付き合うとか男女ででかけだすものなんだって」
「えぇっ、なんで?」
「うーん。皆、彼氏彼女が欲しいからじゃないかなぁ」
ヨリちゃんは答えは知らないらしいが、中学生については詳しい。というのも、ヨリちゃんは中学校に対して不安に思っていて、事前に調べたりしているらしいからだ。
それにしても小学校じゃ男女をお互い敵みたいに見ていたのに、中学生から恋愛したいからって仲良くしだすなんて変なかんじだ。
「ほのかちゃんも彼氏ができたら私と遊ばなくなっちゃうかも」
「そんなことないよ!」
ありえないもしもの話に、私はすぐ答えた。まず私に彼氏ができるってのがありえない。彼氏ができるとしたらおしとやかなヨリちゃんが先だと思う。そして私が他の人と遊ぶからってヨリちゃんと遊ばないなんて事はない。他の人とも遊ぶことはあるけれど、一番一緒にいるのはきっとヨリちゃんなんだから。
「どっちが大事とか、そんな事考えたくないよ。友達より大事にしなきゃいけない彼氏なんていらないし」
「それもそうだねえ。お互いそんな彼氏は作らないようにしようね」
「うん!」
私とヨリちゃんの決意。だけどヨリちゃんはにやにやとリクを見ている。さっきからどうしたんだろ。
■■■
それからヨリちゃんはSIONの方に準備に向かって、私とリクとで公園周辺を見回る事にした。途中、ヨリちゃんがいなくなったからかリクはヨリちゃんについて話す。
「ヨリが、どんどんおっかなくなっている気がする」
「ヨリちゃんがおっかない?」
私は思わず笑ってしまった。ヨリちゃんは小さくて可愛くて優しくて、とてもそんな言葉が似合わない。でも口数少ないリクが言い出すからにはそれだけのことがあるのかもしれない。
「ヨリは僕の考えがわかってて試すような事を言うんだ」
「うちのお母さんみたいなかんじかな。『勉強しなさい!』って言われるより『勉強したよね?』みたいに言われた方が怖いみたいな」
「そう、そんなかんじ」
それならリクの気持ちはちょっとわかった。怒鳴られるのはいつか慣れて逆らう事ができてしまう。けど信用された上で確認するかのようにされるとなんとなく怖くて逆らいづらい。リクが感じた怖さはそれなんだ。
「リクにも怖いものがあったんだ」
「あるよ。怖いものなんて、いっぱい」
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