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「え、まさかほのかが僕を敵視するのって、おじいちゃんの言葉が原因なの?」
「多分。確か私がこうなったのって小学校くらいだよね?」
「うん。ランドセルどっちが物が入るか勝負だとか言い出してた。変な勝負しかけてくるなぁとは思っていたけど」
くだらない勝負と自分の素直さが恥ずかしい。私がリクに対して勝負勝負と言い出したのは小学校入学辺り。つまりおじいちゃんが亡くなった後のことだ。
おじいちゃんに言われたからって、私は無意識にリクに勝負を挑むようになってしまった。六年もそんなことをしていたのだ。そして私はそのことを今まで忘れていた。
「……多分、ほのかは僕やおじいちゃんに気を使ってくれたんだね」
「そ、そう言うと私、すごく良い子みたい。実際絡みに行ってただけなのに」
「僕がほのかに絡まれている間は、一人ぼっちじゃなくなるよ。おじいちゃんはそれが目当てだったんだ」
「どういうこと?」
「おじいちゃんはギリギリまで僕のこと心配してたんだよ。寂しがりやな僕が一人にならないように。ライバルとして勝負を持ちかけられている間、僕は一人じゃないから」
「……でもなんでライバル?」
おじいちゃんのリクへの愛情はよく知ってる。
けどおじいちゃんがリクを一人にしたくないのなら、『一緒にいてあげて』って言ってくれればいいのに。それだって私は素直に従ったと思う。
「さっき、男女は仲良く遊ばないとか遊ぶようになるとか話していたよね。だからおじいちゃんはライバルがいいと思ったんだよ」
「……確かにリクと仲良くするようにって言われたらずっとは無理かも」
「うん。もしほのかが男子は敵だから関わりたくないとか、彼氏ほしいから好きな人以外と話したくないとかいうタイプだったら、『仲良くしてね』だけじゃその言葉は従えないよ」
「うーん……そういうタイプじゃないからわからないけど、確かに『仲良くしてね』じゃ困ることになるよね」
『仲良くしてね』じゃ私の気分による部分が大きい。リクを嫌いになるかもしれないし、おじいちゃんを嫌いになってもそれができなくなってしまう。
けれど『ライバルになって』なら私の気分はあまり関係ない。リクが好きでも嫌いでもできる。ただ私が飽きないうちならば。
こんな口約束、その通りにしなくたっていい。けれど『仲良く』だとそれができなくなったとき、私はおじいちゃんに対して申し訳なく思うかもしれない。
けれど『ライバル』ならできるし、できなくなる頃にはおじいちゃんの事を忘れているだろう。だから私が気にしなくてすむ。リクのおじいちゃん、そこまで考えてたんだ。
「まさかライバルにそんな意味があったとは。我ながらびっくりだわ」
「ほのかは自分の事なんだからさっさと気付けばよかったのに」
「気づけないよ。ぎりぎり幼稚園のことなんだから」
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