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これは本当に稲妻みたいに思い出したことだ。きっかけは朝見た夢だけど。幼稚園の頃の話なんてすぐ忘れてしまう。
しかし気付いてしまったことがあって、思わず私は足を止めた。
「……じゃあもう、ライバルなんてやめたほうがいい?」
「どうして?」
リクも足を止めて振り返り、そして聞き返す。私はずっとリクをライバル視してきて、しかし勝てたことはなくて、たまにリクは面倒そうにしていた。
ならやめるべきかと思ったんだけど、リクはこう聞き返すというならそう嫌でもなさそうだ。
「もうおじいちゃんが亡くなって六年もたったし、私は結局リクに勝てるものがあまりないし、なのに私に絡まれて、リクはうっとうしいんじゃないかと思って」
「ふふっ」
「なんで笑うの」
こっちは真剣に考えて反省もして言い出したのに、リクは小さく笑う。
「ライバル視は僕を一人にしないっていう目的なんだよ。それで僕は一人になりたくない。誰も困っていないよ」
「でもリク、男子にも友達がいるでしょ。確かに友達は少ない方かもしれないけど、いないわけじゃない」
「ライバルになりたがる子なんて、ほのかぐらいだ」
そう言われると納得してしまう。さっき言った通り、仲良くするのは気分次第だ。喧嘩して嫌いになったり、忘れてしまうこともある。リクの友達だってそういうことがあるかもしれない。だからライバルの私を貴重だと思っている。だからこのままでいい、ってこと?
「それにほのか、中学初めての定期テストで勝負するんじゃなかったの?」
「あ、それやる! 五月頃に中間試験があるんだよね?」
定期試験という、小学校にはないものに私は燃えていた。算数は数学になるし英語も本格的になる。もしかしたらリクはそれが苦手かもしれなくて、私はやっとリクに勝てるかもしれない。
それを思うとおじいちゃんの言葉はもういいかな、なんて思えない。これからも私はリクのライバルでいたい。
「良かった、私ばっかりやる気かと思っちゃった」
「そんなことないよ。ほのかが僕より高い跳び箱飛ぼうとしたりとか、危ないことしない限りはね」
「そんな事もあったナー」
リクがたまにめんどくさそうなのは、私が危ないことをしようとした時かもしれない。それ以外ではわりとやる気なんだ。こうして私が忘れた事もリクが覚えているほどなんだから。
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