ライバルの理由

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■■■ それからリクのお母さんが差し入れにくれた梅干しのおにぎりをお昼ごはんに食べることになった。おにぎりを持ってきてくれたのは呉服屋のアヤカさん。シートやお茶も持ってきてくれて、公園のはしっこの小さなスペースで簡単なお花見をした。 「いやあ、うちもちょっとはお祭りに参加したくて企画してみたけど、全然客来ないわー」 アヤカさんは温かいお茶を飲んでからそう言った。私はそれが初耳だった。一応お祭りに参加しているお店は何をしているかはともかく、案内できる程度には調べている。けれど呉服屋さんが何をするかは聞いてない。 「呉服屋さんは何をするの?」 「着物レンタル着付けコーナーだよ。お花見だし写真映えするし、いける企画だと思ったんだけどなぁ」 アヤカさんの語る企画は初耳だった。そんなおもしろい企画なら私は忘れないはずなのに。中学生も着られるものがあるのなら私も着たい。 「それ、チラシになかったですよね?」 「そうだよ。だって思いついたの一週間前なんだもん」 リクが口を挟んで、アヤカさんはへらっと答える。 そうだ、呉服屋さんは毎年祭りに不参加。というのも呉服屋にお花見客は用がないからだ。 「皆が楽しそうに準備してたからさ、私も何かやりたくなって、あばあちゃんを説得して着物や小物集めたんだよ。でもやっぱり宣伝しなかったのが痛かったかなー」 急な思いつきだったんだ。ならお客様が来なくても仕方ないのかもしれない。私達でさえ知らなかったのだから 「そうですね。チラシに写真と、ネットで宣伝をすれば人が来ると思います」 リクもそう考える。多分写真映えを気にするような人はチラシで情報収集はしない。ネットでやって、あとはどんな着物があるか、一例でもいいからチラシやネットに載せれば今頃呉服屋さんに若い女の人が殺到していたかもしれない。 でも私は午前中にあった事を思い出して、アヤカさんに提案した。 「そうだ、アヤカさんの大学のお友達のリナさんがお花見に来てたよ。リナさん達を誘ってみればいいんじゃないかな?」 「リナが? ほのかちゃん、あの子に会ったんだ」 「うん。案内したし、アヤカさんの話もしたよ」 そういえばアヤカさんもリナさんにお花見に誘われていたんだっけ。で、『行けたら行く』って話で、アヤカさんはきっと着物レンタル企画で今まで忙しくしていたんだと思う。 でも今からアヤカさんがリナさんヒナさんに声をかければ着物レンタルしてもらえるかもしれない。 「リナっていうと、ひなも居た? リナひなでいつも一緒なのよね、あの子達」 「いたよ。ふわふわした髪の人だよね」 「……男子は居た?」 「あ、うん。イケメンの人とやせた人と、太った人の三人は見たよ」 それを言うとうーんとアヤカさんは深く考えこんでしまった。
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