ライバルの理由

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もしかしたらレンタルできる着物は女性用だけで、男性用はないのかもしれない。それなのにそんな誘いをしたら男子に申し訳ないと思うよね。 「やっぱいいや。正直いい噂ないから関わりたくないんだよね」 「噂?」 私が聞き返してもアヤカさんはそれには答えない。少し表情もなにかに迷っている様子だ。やがてアヤカさんはジーンズをはたきながら立ち上がる。 「ごちそうさま。ごめんね、二人の花見に混ぜてもらっちゃってさ」 「ううん、こっちこそおにぎり持ってきてくれてありがとう」  花見なんて大したものではないけれど、しっかり挨拶をしてアヤカさんは呉服屋に戻って行った。 私達も休憩を終えて見回りを再開する。お昼のピークは過ぎたのだろう。食事を終えたのでそろそろ帰ろうとするような花見客がいた。つまりさくら祭りに引き込むいいチャンス。 だけど、そうはいかない展開が私達を待っていた。 「だからさ、金は誰かに盗まれたんじゃないかって言ってんだよ!」 のんびりとした花見の場にふさわしくない言葉だった。お金を盗まれただなんて、ぞわりとした響きだ。そして聞いたことのある声だった。 「確かに皆から集めた金を封筒に入れて、鞄に入れておいた。でもなくなったんだよ。誰かが盗んだに決まってる!」 騒ぎを起こしたのはリナさんのグループだった。そのうちやせた男の人が怒鳴っている。リナさんとヒナさんはその声に怯えたようにしていた。 「リナさん、どうしたんですか!?」 「ああ、ほのかちゃん。なんでもないの。今日の会費がなくなっただけで」 「大変じゃないですか! 交番まで案内しますよ」 「い、いいのいいの。一万円くらいの話だから。多分探せば見つかるだろうし」 リナさんはそう言うけれど、聞いているだけの私はさっと青ざめる。一万円といえば大金だ。うちのお店のケーキを全種類買えるんじゃないかってくらい。 でもこの人達は大学生で一万円はそこまで大きな数字じゃない。それくらいで警察に行くのはどうかと思うような額なんだ。 
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