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「なくなったのはサークルの会費だよ。事前にユウジが集めておいて、今日食べ終わったらそこから買い出しで立て替えた人に返金する。そのはずのお金がなくなったんだ」
「ちょっと、レン君」
イケメンの人、レンさんがさっき来た私達に説明してくれた。リナさんはわざわざ子供に言わなくてもというかんじに咎める。
なるほど、だからやせた人、ユウジさんはあんなにも怒っていたんだ。いや、怒るっていうよりは焦っているのかな。
「だ、大丈夫だよ。きっとお金はどこかに紛れているだけだから。ほら、僕らも紙皿とか出したりしてごたついていたし」
「ヒロキ君の言う通りだよ。まずは荷物を探そ?」
太った人、ヒロキさんが言って、ひなさんも頷く。そして五人の大学生は各自荷物を漁った。この騒ぎになるまでに解散するため後片付けをしていたのだろう。しまい込んだものをもう一度出す。
飲んでいないジュースの入った袋。肌寒いこの季節のために用意されたひざ掛け。大学のものらしき書類。それらを一度出して、丁寧に確認する。
しかし五人はため息ばかりをついていた。
会費は見つからなかった。
「やっぱり盗まれたんだよ。ほら、途中絡んできた酔っぱらいいたろ?」
「でもあの酔っぱらいはヒナに寄ってきて、すぐ男子が追い払ってたじゃない。ユウジ君の荷物に近寄る暇なんてなかったでしょ」
考えるのは花見客を狙ったスリ。でも宴会して楽しんでいるところに寄っていって、お金だけをすっと奪う、というのはなかなかに難しい。どれだけ盛り上がっていたって、仲間以外が近付いたら警戒するものだ。隣にいた花見客が盗んだという可能性もあるけれど、今日はわりと空いている方だから隙間があって、それも難しい。
ならばとユウジさんはぎろりとした目を残り四人に向ける。
「ならお前達が盗んだんだ」
「はぁ? ありえないでしょそんなの」
ユウジさんの疑いをすぐにリナさんが否定する。仲間を疑うのはよくないし、それ以外にもそんなことするはずないとわかっている。
「会費は合計一万円。一人二千円で集めたんだ。俺達の誰かが盗んだってもうかるのは八千円。それは仲間を捨ててでも欲しい金かよ」
レンさんが冷静に答える。その冷静さはリクみたいで、はたから様子を伺っていたリクもうんうん頷いていた。『一万円ぐらい』と言っちゃう大学生だ。そんなものより友情とか大事なものがあって、それは八千円以上の価値があるはずだ。
「どうだかな。それって俺達の事なんてなんとも思っていない奴なら盗めるって事だろ?」
ユウジさんは視線をひなさんに向ける。その視線にひなさんは身をすくめた。ユウジさんが言うには、ひなさんは『仲間思いじゃない』ってこと?
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