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「仲間なんてなんともないと思ってる奴なら会費の封筒じゃなくて、俺らの財布直接狙うだろ。その方が確実に金が入っているんだから」
またレンさんが冷静に返し、リクはうんうん頷く。リクも誰も指摘しなければ言いたかった事なんだろう。
お金目当てならお財布を盗んだほうが手っ取り早い。大学生のお財布の中はしらないけど、交通費は確実に入っていて、さらには出先でほしいものと出会った時に買えるくらいのお金が入っていると思う。リナさんだってご飯代を立て替えられるくらい持っていたんだから。
ますます仲間内で会費を盗んだとは考えにくい。だったらなくなった会費は?となって、皆黙りこんでしまう。しかし新たに発言したのはヒロキさんだった。
「じゃあいっそ、身体検査して犯人を見つけようよ。男子と女子で別れて、荷物全部と服の下も確認するんだ」
「えっ、それは……」
今日会った私でも優しそうに見えるヒロキさん。だけどその人が言ったとは思えないような、はっきりした意見だった。
身体検査って、それと服の下も見るだなんて、かなり疑っていて犯人探しをしているみたいだ。女性二人も表情を曇らせる。女同士であっても服の下を見せるというのは抵抗がある。
「もちろんこんな疑い方をするのは良くないことだって僕もわかってるよ。だから何も見つからなかったら僕が謝るし、皆に縁を切ってもらっても構わない。でもいい加減、僕はこのサークルで立て続けに起きる変なことを解決したいんだよ」
ヒロキさんも自分の発言には責任を持っている。縁を切られてもかまわないだなんて相当な覚悟だ。それもこの事件を解決したいから。そしてこのサークルには会費行方不明事件以外にも、何か事件があったから。
「いいよ、やろう。私達もいろんな事件の犯人は見つけたい。だからヒロキ君はそんな責任抱え込まなくていいよ。これは私達の問題なんだから」
その意見に賛成したのはひなさんだった。身体検査は嫌そうだったけど、それ以上に自分が疑われるのが嫌だったのかもしれない。さっきユウジさんから疑いの目で見られたからというのもある。
ここで部外者であるリクは手を上げた。
「良かったら調べるための場所を貸します。うちは和菓子屋で、着替えるスペースは有ります。女性はアヤカさんの呉服屋を借りてはどうでしょう? それで第三者の証言として、僕は男性に、ほのかが女性に付きます」
なるほど。トイレで身体検査としても、あまりに狭く人の出入りのある場所じゃ落ち着かない。だからリクの家と、アヤカさんちの呉服屋を貸すというわけだ。お友達の家なら女性二人も抵抗がないかもしれない。
あとは男性三人か女性二人が口裏を合わせてはいけないから、第三者として私達もつく。やりすぎとも思えるけれど、本当の事が知りたいのならこれくらいはしなければならない。
「わかった。地元の子がそう言ってくれるならありがたい。やろう」
レンさんがそう言って、お花見大学生グループは二手に別れることになった。
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