ライバルの理由

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■■■ 「一万円がなくなってこの身体検査って、ハァ? 意味わかんないんですけどー」 呉服屋について、事情を知ったアヤカさんは大げさに言った。気持ちはわかる。なにもこんな花見の場で犯人探しをしなくても、というかんじなのだろう。 「まぁ、あんた達の潔白を証明するためならうちぐらい貸してあげるし、証言だってしてあげるけどさ」 アヤカさんの頼りがいは商店街の外でも発揮されるみたいだ。呉服屋にある試着スペースを貸してくれることになった。 そういえばこの呉服屋もさくら祭りで着物レンタルしているけど、誰も来ていないんだっけ。 「ちょっと待ってて。二人とも、どうせなら着物レンタルされていってよ」 「え?」 「どうせ会費隠し持ってないか確認するため服脱ぐならさ、着物着付けしちゃおうよ。私二人に似合うの選んでくる!」 返事を持たずにアヤカさんは西野のおばあちゃんの元に相談しに行く。 これはきっとアヤカさんの気遣いだ。盗みを疑われて身体検査するより、レンタル着物で素敵に着付けてもらうほうがいいに決まってる。 「リナ、ごめんね。身体検査なんて嫌だろうけど、私がああ言っちゃって」 「いいよ。ユウジのやつ、ひなを疑っていたんだから。その疑いを晴らしたくて当然だし、あの温厚なヒロキ君までああ言い出したんだから」 「……そうだよね。あの優しいヒロキ君がああ言ったから、私もなんとかしなきゃって思ったの」 まずは手荷物チェックとして、リナさんヒナさんは私に荷物を預けた。 二人からしてみればヒロキさんが身体検査を言い出したのはとても不思議なことで、だからこの二人もこれはやらなきゃいけないと賛成したんだと思う。 それに積もりに積もった不満なんかがあるみたいだったし。 「あの、五人の間には他にも不思議な事があったみたいですけど、何があったんですか?」 「サークルの部室に置いていた、リナの本がビリビリに破かれていたの」 聞いてみたらひなさんはひっそりというかんじに教えてくれて、私は言葉をなくした。持ち物をめちゃくちゃにするなんて、ひどい。そして部室内にあったということは、犯人がサークルの人達ということになる。
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