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「別にレア物の古書とかじゃないから買い直せばいいよ、って当時は言ったんだけどね。まさか事件が続くとは」
「他にも何かあったんですか?」
「部室のホワイトボードに『ヒロキはレンの寄生虫』なんて書かれてたりしたわ」
「寄生虫?」
「えーと、レンくんとヒロキ君は幼馴染なの。でもそれを知らない人は『ヒロキ君がイケメンのレン君にまとわりついておこぼれをもらってる』とか思う人もいて」
「おこぼれ?」
「イケメンに近づいてくる女の子を利用してやろう、みたいな。ごめん、説明しにくいや」
リナさんは子供の私にもわかるように説明してくれたから、なんとなくはわかった。
レンさんとヒロキさんは二人は幼馴染だけど、ちょっと雰囲気が違う。だからヒロキさんがレンさんを利用してる、なんて思う人もいるんだろう。これも部室内の犯行なのでサークル内に犯人がいる。
「あとは急にサークルをやめる人が何人もいたり、私やレン君やユウジ君には大学内で悪い噂流されたりしてるの」
ひなさんが付け加える。今日いる皆は被害にあっているんだ。そして今回の会費の行方不明。身体検査をしてでも犯人を見つけたいという気持ちもわかる気がした。アヤカさんがこの人達を避けているように見えた理由も。
私は言われた通り、二人の荷物を調べることにした。財布に化粧品などのポーチ。ひざ掛けに本や書類。全部隅々まで見たけれど、会費が入っているらしき封筒は見当たらない。
「ていうかどうしよ。私、今日立て替えた分でお金なくて、交通費もないんだよね。会費が返ってこないとなると私は歩いて帰らなくちゃいけないのかも」
「交通費なら私が貸すよ。え、これ……」
「ああ、それ?」
私にとって見慣れた白い袋。それはリナさんの荷物の中にあった。確か、それはリナさんがうちのお店で買ったマドレーヌだ。それをヒナさんに見つけられて、リナさんは少しバツが悪そう。
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