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これはかなり当たっていると思う。もしこの場にリクがいればうんうん頷いていたことだろう。確かにその考えならヒロキさんが身体検査を言い出したのも納得だし、そういう手段をとるということはユウジさんが犯人かもしれない。でも動機がわからない。
「ユウジ君もお金がないと困る人だし、会費を盗んだってどうしようもないけど、多分お金目当てでやったわけじゃない。人間関係を壊すのが目的っていうかな。そんなかんじがしたの。今までの事件だってさ、私達が疑心暗鬼にさせるのが目的ってかんじじゃない?」
部室にあったあまり価値のない本を破く。
ヒロキさんとレンさんの友情を疑うような事を書く。
悪口を言いふらされる。
それらの事は誰かを傷つけたいというより、疑わせて喧嘩させる事が目当てと考えられた。だからユウジさん的には会費はなくなって、損してもいいんだ。
「だからヒロキ君もユウジ君が怪しんでると思ったけど、会費、向こうで見つかったのかな。見つからなくてヒロキ君が落ち込むことだけは避けたいな」
そうだ、ヒロキさんが疑っていざというときに備えたとしても、服や手荷物から会費が見つからなくては意味がない。
でも私達が今やらなきゃいけないことはリナさんヒナさんの無実の証明。それと少しでも二人にいい思いができるように着付け。ちょうどアヤカさんも大量の着物や小物を持って戻ってきた。
「お待たせ。ほのかちゃん、ここから先は私が引き継ぐから、電話、出てくるかな?」
「電話?」
「うちのお店の電話ね。雪華堂さんからかかってきたから早く出てあげて」
着付けに関して私は何も手伝えない。ならリクと情報交換してもいいだろう。証人はアヤカさんに任せて、私は試着用の部屋から店先の、西野のおばあちゃんのいる場所へ向かい、おばあちゃんにひと声かけてから置かれた受話器をとった。
「もしもし、電話代わりました。ほのかです」
『ほのか。そっちはどうだった?』
リクはいつもとは違う別人みたいな声で、まずこちらの状況を聞いた。
「見つからなかったよ。今アヤカさんが服の下も調べているけど、多分ないと思う。そっちは?」
『こっちもだ。一応持ち帰る予定だっていうゴミも調べてみたんだけど、それでもなかった』
女子側の推理は無駄だったようだ。ユウジさんが隠し持っていると思ったのに、持っていなかった。ヒロキさんたちもがっかりしただろうな。
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