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『今男性三人にはうちの和菓子振る舞ってる。そっちは時間かかりそう?』
「かかる。かなりかかると思う」
試着室からとても盛り上がっている様子が聞こえて、そう答えるしかない。男性陣にはかなり待ってもらう事になりそうだ。
『そっちは何か聞けた?』
「聞けたよ。前から軽めの事件が起きていたし、皆ユウジさんを疑ってるみたい」
そこから私は聞いた話をなるべく詳しく説明した。五人に部室や周囲で起きた嫌な出来事。ヒロキさんがユウジさんを疑ってるのではないかということ。
リクは口を挟まず、しかし納得している様子だった。
『僕もユウジさんが怪しいと思ってたんだ。でもあの人の荷物から会費は見つからなかった』
「リクも?」
『うん。なんていうか、ユウジさんはひなさんに対して敵意を持っていたみたいだから』
そういえば、ユウジさんはひなさんを疑って睨みつけていた。そしてひなさんはそれを怖がっていた。どうしてひなさんだけ?と思う。ユウジさんはかなり気が短い方だと思っていたけど、それでもやけにひなさんに対して扱いが悪かった。でもユウジさんは会費を隠し持ってはいなかった。
『そもそも、ユウジさんは身体検査をすると言っても反対しなかったよね。それは会費を持っていないってことなんじゃないかな』
「うん……普通、身体検査とか嫌だよね。あの人すごく文句言いそう」
電話線でも切れたのか、というくらい無音になる。受話器からリクの声が聞こえなくなった。まあリクはおしゃべりとは言い難いから、電話だとよくこういうことがあるんだけど。
「リク?」
『ほのか、女性二人のゴミを調べてくれる?』
「は、」
『花見客はゴミを全部持ち帰るけど……そうだな、分別して洗わなきゃいけないようなゴミを中心に探してほしい』
リクの提案に驚いたけど、男性陣はゴミをもう調べている。うちはまだやっていないのだからやるべきだ。
公園で花見をする時の決まりは『ゴミは家まで持ち帰ること』。まぁ、それを守らない人もいるけれど、ありがたいことに大学生達はそれを守ってくれている。なのにゴミの事を忘れてしまった。もしかしたら会費はそこに紛れているのかもしれない。
私は電話を切って、うとうとしている西野のおばあちゃんにお礼を言って、また試着室に戻った。
試着室では既に二人が鮮やかな着物姿に変わっていた。振り袖とかじゃなくて日常っぽい着物だけど、それでもやっぱり洋服に見慣れた私には鮮やかに見える。と、見とれてる場合じゃない。
「リナさんひなさん、ゴミ漁ってもいい?」
「え、ゴミまで探すの?」
「うん。リクの読みでは持ち帰るようなゴミが怪しいらしいから」
「でもさすがに悪いわ。私達がやるから」
「せっかくきれいな格好してるんだから、私に任せてよ」
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