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「だったら女子のどっちかが犯人ってことだろ」
「犯人は女性陣のどちらかに罪をなすりつけたかったんです。だから隠した犯人がいます。それはおにぎりを食べた人です。ほのかから聞きました。会費の封筒は、プラ容器にお米で貼り付けられて、容器に隠されていたそうなので」
五人の大学生を前にして堂々と語られるリクの推理。そこまで語られれば、あとは大学生達も推理することができる。
「おにぎりを食べたっていうと、ひなちゃん以外か。まだ絞り込めねーな」
レンさんが言う。まずはひなさんが疑われないようにする作戦は成功だ。
そしてここからさらに絞り込む。
「ほのか、会費を出してくれる?」
「あ、うん。はい。油染みがすごいから気をつけて」
私は会費を一時預かっていた。封筒はマヨネーズの油染みだらけ。幸い中の紙幣にはしみていないようだけど、それでもあまり触りたいものではない。
「これ、油染みはサンドイッチのマヨネーズのようです」
「じゃあ犯人はサンドイッチを食べた奴だな? つまりオレじゃない!」
嬉しそうにユウジさんは答える。この人はサンドイッチが嫌で食べなかったそうだから、自分が犯人ではないと証明される。けれどリクは首を振った。
「いえ、容器のふたに封筒をはりつけるのはサンドイッチを食べなかった人にもできます。花見でお弁当を開いた時、一番邪魔になるのはふたですから。そのへんに置いたものに封筒をはりつけて、片付けの際にそっと箱に合わせれば誰にも気づかない。それでひなさんが持ち帰って洗おうとした際にそれに気付く」
「ひなちゃんが気づいてどうするんだよ?」
「皆に疑われるのではと考え、言い出せなくなる。ユウジさんの狙いはそこです」
リクの推理で思い出したのは会費が見つかったときのひなさんの青ざめた顔。あれは自分が犯人だとバレた反応というより、疑われたくないというような反応だった。なんていうかな、犯人だったらもう少し堂々していると思う。私がゴミを漁った時点で動じていてもおかしくない。
でもひなさんが動じたのはサンドイッチの容器から会費が見つかった時からだ。
「だから、それでどうするっていうんだよ。ひなちゃんが会費持ってて、俺がどう得するっていたんだよ」
「あなたはこの人達の人間関係を壊すのが目的だからです。他のサークルで起きた事件も問題にするにはささいなことです。けど、ささいな事でも互いを疑い合えば、友情だって壊れてしまう」
ささいなことなら皆で犯人探しをしない。ただ自分がされた事に傷ついて、密かに誰かを疑ってしまうかもしれない。それに気付いたのはヒロキさんだった。
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