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「多分ヒロキさんはなんとなくユウジさんが犯人だと気付いていたのだと思います。それで今回の事件で、絶対解決して嫌な事件すべてを終わらせようと身体検査を言い出したんです」
「あ、うん。男子で別れて、ユウジ君が犯人だという証拠を押さえる。女子達を嫌なことに巻き込む心配もないし、二対一ならなんとかできるとおもったから」
ここはリナさんの推理通り。ヒロキさんはとても優しい人で、安全に問題を解決したかった。しかし疑われたユウジさんはヒロキさんをにらみつける。
「でも俺は会費を持ってなかった。それで持ってたのはひなちゃんだ。確かにおにぎりは食ったが、レンもヒロキもリナちゃんも食ってだろ?」
「ユウジさん、上着はどうしたんです?」
「は?」
「上着です。さっきから鳥肌になって震えていて、そこまでして半袖でいるのはどうしてですか?」
そうだ、ユウジさんは上着を着ていた。ベージュのジャケットだ。この四月まだ肌寒い時に半袖で、あるはずのジャケットも着ずに震えているのはおかしい。
はっと気付いたらしいレンさんが無理矢理にユウジさんの鞄から布を引っ張り出す。ベージュのジャケットだ。それを広げ、袖口を示す。
「ユウジ、お前はサンドイッチを食べなかったはずだよな。なのにどうして袖にマヨネーズの染みがついているんだ?」
ジャケットの袖口にはマヨネーズのものらしきシミができていた。これは会費の封筒と同じ、マヨネーズによるものだ。犯人が会費をプラ容器に貼り付けるために触れた時、うっかりついてしまったものだろう。他の人ならサンドイッチを食べたときについたんだろうけど、ユウジさんはサンドイッチを食べなかったはずなのに。
強気だったユウジさんもこれにはさすがに慌てた。
「こ、これはマヨネーズのシミじゃなくて、」
「だったらどうして上着を隠していたんだ。こんなに寒がっているのに、上着を着ない理由は?」
レンさんが問い詰める。袖の汚れがマヨネーズかどうかは警察にでも調べてもらわないとわからない。
けれど、ユウジさんはわざと上着を着なかった。それはこのシミを見られるとまずいとわかっていたからだ。こればかりはうまく言い逃れをする事はできない。
「そうだよ! オレが会費を預かって、ひなちゃんの持ち帰るゴミに入れた! お前らを疑心暗鬼にさせるためにな!」
言い逃れができなくて、大声でユウジさんは認めた。
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