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わからないのはなぜそんな事をしたかということ。この五人は仲良さそうにお花見をしていたのに、どうしてそれを壊すような事をしたのか。
ユウジさんの大声に怯えていたひなさんだけど、今だけはきっとユウジさんを睨みつけ前に出た。着物姿のせいか妙に迫力がある。
「いい加減にして! ユウジ君、私が憎いなら私だけを攻撃すればよかったでしょ! 告白されて振ってしまった事は悪いとは思ってるけど、あなた、『サークルでは普段通り接して』って言ったじゃない!」
いろんな意味で私はびっくりした。おしとやかなひなさんからは信じられないほどの大きな声だ。そして語られるその内容は、恋愛絡みで、大学生達も知らなかったらしい。皆驚いている。
ユウジさんがひなさんに告白して、それで振られただなんて。
でもそれならユウジさんの動機は理解できる。振られた逆恨みでひなさんに罪をなすりつけてひなさんに嫌な思いをさせることが目的だったんだ。
ここまでひなさんは親友のリナさんを疑ってしまったし、会費が見つかった時にはひどいショックを受けていた。何度かユウジさんがひなさんを疑うような発言もしていた事もある。
「お前が『今はリナ達と一緒にいるのが楽しいからそういうふうに見えない』とか言うからだ! どうせお前もレン目当てのくせに、友情選んで良いやつぶりやがって!」
ユウジさんも反論する。つまりひなさんはユウジさんの事を友達としか思っていなかった。でもそれをユウジさんは『レンと付き合いたいから変な噂が立たないよう友情を理由に振った』ととられたみたいだ。そんなことは一言も言っていないはずなのに。
だから怒ったユウジさんはわざと友情が壊れるような事をした。
「それ、ありえないだろ」
口を挟んだのはレンさんだった。たぶんありえないというのはひなさんがレンさんを好きだということ。そして変わらないクールな顔で、とんでもない事を言う。
「だってひなちゃんはヒロキと付き合っているんだし」
「はぁ!?」
大きく反応したのはリナさんだった。ひなさんとヒロキさんはどう説明すればいいのかわからないという顔をしてる。ユウジさんは呆然としているし、レンさんは平然としている。
「ひな、本当なの?」
「ごめんね、言えなくて。嫌がらせがあったからもしかしてって思って誰にも言えなかったの。なんでかレン君は知ってたけど」
リナさんは初耳だったし、勘付くこともなかったらしい。でもレンさんは気付いていた。
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