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「……なんだ、結局オレのこと、最初から興味なかったんじゃねーか」
呟いたのはユウジさんだった。それには少し同情してしまう。
友情を理由に振られて、でも他の人とすぐ付き合ったなんて。それなら素直に『好きじゃない』っていってくれたほうが良かったと思うかもしれない。
「ユウジ君、僕達が付き合いだしたのは、部室に中傷の落書きがあってからなんだよ。僕はレン君の寄生虫って書かれて、ひなちゃんはそれを否定して、でも僕はよくある慰めだと思ってそれさえ信じられなかった。けど『だったら私が付き合いたいって言えば信じてくれるの?』って言われて付き合うようになったんだ」
ヒロキさんが庇い立つように前に出て言った。きっかけはユウジさんの落書きだったんだ。
レンさん目当てじゃなくヒロキさんが好きだって、証明するためにひなさんは付き合うことを言い出した。もちろん元からひなさんはヒロキさんが好きで、しかもユウジさんのことがあって誰とも付き合わないつもりだったのに、それでもヒロキさんが素敵な人だって本人に伝えたかったのかもしれない。
「確かに『仲間なのが楽しいから付き合えない』って嘘ついたのは誠実じゃなかったかもしれない。けどひなちゃんはモテるから、告白してきたのに振られた途端に暴言や暴力を振るってくる男がいっぱいいて、それを気にしていたんだと思う」
「つまりオレの事を信じてなかったって事だろ」
「……実際、君の事は誰も信じられるはずがないよ。振られたからってひなちゃんの人間関係を壊そうとしたんだから」
ああ、これは小学校でもクラスで一番かわいい子が『アイドルの◯◯が好きー』なんて話をしただけで関係ない男子が『お前みたいなブス相手にするかよ』と言う感じだ。その人のことを好きなくせに少しでも相手にされないとバカにするやつ。
そんなことが今までいっぱいあって、ひなさんはユウジさんの告白に慎重に答えたんだろう。そしてユウジさんは予想通りに暴言をはくタイプだった。
ヒロキさんに言われてさすがにこたえたらしい。ユウジさんはしばらく何も言わなかった。
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