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ラブコメです!2
〈嗚呼、うるわしの御曹司〉 〜とある勘違い御曹司の恋〜 中編
神坂のコートを肩に羽織ったオレは、ようやく台の下から這い出してきた彼女の手を取った。
「寒いだろ。早く部屋にもどるぞ。」
「うっ、うん。」
白のニットに、白黒の千鳥格子のタイトスカート、シンプルなベージュのマフラーをふわっと巻いた彼女は、勝ち気そうに見開かれた瞳を除けば、とても女らしくかわいらしい。
だがな。見た目と違うんだよな、コイツ。
ゴスッ。
「イッテェ!」
ほら来た。油断してると、やられるからな。
「コートずり落ちてるわよ。もう、いきなり上半身裸とか、やめてよね!」
ブツブツ言ってやがる。
オレは、肩に決まったチョップの跡をさすりながら、さり気なく神坂の肩を抱いた。
「きゃぁっ!いきなり何するのよ!」
危うく、反対の肩にもチョップを食らう所だったが、オレにも学習能力ってモンがある。今度は、軽く受け止められた。
「しっかり捕まえとかないと、また逃げられるからな。」
神坂の目を覗き込んでニヤリと笑うと、彼女はまた少し赤くなって俯いた。
か、可愛いじゃねぇか。
しかも、もう抵抗する気が無くなったのか、大人しく肩を抱かれている。
どうだ、オレのフェロモンは。だんだんコイツも、オレの麗しい肉体に悩殺されて来たか?
愛いやつよ。
オレは内心、ほくそ笑みながら、しっかりと神坂の肩を抱いて、部屋の扉の前に立った。
ムフフフ、部屋に入ってしまえば、たっぷりと時間をかけて、オレの身体のゴージャスさを教えてやれる。
この部屋を出る頃には、神坂はもう完全に、オレに骨抜きのメロメロだ。
考え方が完全にエロおやじ的な気がしたが、そんな事はどうでもいい。
オレは、ニヤケそうになる顔を必死に引き締めて真面目な顔を作ると、部屋の扉に手をかけた。
「あっ、待って!」
神坂が慌てたように声を出したが、誰が待つか。
部屋の扉を大きく開け、彼女を促して一緒に中に入った。
「花澄ちゃん、待ってたよ。おかえり。」
部屋の中から、透き通った声で応答があった。
・・・は?
オレは思わず、目が点になった。
「ユーリ、なぜここにいる!」
部屋の中から声をかけて来たのは、オレの幼児時代からの幼馴染で腐れ縁、しかも今は他社の経営者に若くしてのし上がり、オレの会社と凌ぎを削っている宿命のライバル、森山ホールディングスの御曹司でもある男、森山悠理だった。
「あ、トーマいたんだ?誕生日おめでとう。花澄ちゃん、遅かったね?もう来ないのかと、待ちくたびれちゃったよ。」
そう言うとユーリは呑気にふわぁ、と欠伸した。
せっかく神坂と二人きりになれると期待してたオレは、腹わたが煮えくり返るような気がした。
「ユーリ…なぜ、ここにいる…」
オレは、突然現れた悠理に、地の底から響くような声で、質問を繰り返した。
「なぜ?親友のバースデーを祝いに来ちゃ、いけなかった?」
悠理の、人を喰ったような物言いに、オレはもう少しでキレそうになっていたが、そこへ割り込んで来たのは、神坂だった。
「統真くん、ごめん!あたしが呼んだの!」
「なぁにぃ?」
オレは、ギギギと音がしそうな勢いで、神坂を見た。
「ヒッ!ご、ごめんなさい、何となく1人じゃ、怖かったから…。」
「ほぉ、そうか。オレは怖くて、ユーリは怖くないんだな。」
「い、いや、別にそんなつもりじゃ」
「トーマやめなよ。女の子が男の部屋に1人で行くのは、怖くて当たり前だよ。」
「ユーリ!」
「何だよ、トーマ?声がデカいよ。」
「確かお前も、男だったよな?」
「うん、そうだけどそれがどうかした?」
人の部屋で余裕をかましている悠理に、オレは詰め寄った。
「お前だって絶対、あるハズだ!」
「何がさ?」
「フン、男ならみんなあるだろ。友達みたいなフリして、見えすいてんだよ。」
「だから何が?」
「よーく自分の腹に手を当てて考えてみるんだな。」
「胸じゃなくて?」
「るせぇ!よし決めた。どうしても神坂と俺の間を邪魔したいなら、勝負してやる。決めるのは神坂だ。いいな、神坂?」
神坂は突然の展開に、完全に面喰らっている。
「統真くん、落ち着いて!突然どうしたの?悠理くんを勝手に呼んだことは、悪かったわ。謝る。統真くんの親友だから、サプライズでいいかなと思ったの。そうだ!統真くん、今度また、二人でどこかにお出かけしない?いつか乗った公園のボート、また乗りたいな。」
神坂が必死になってオレを宥めている。
公園デートの提案には、オレも異存は無かったが、今はその時じゃねぇ。
「いいか、神坂。オレは常に冷静だ。決めるのはお前だ。よく見てろよ?
それで、だ。ユーリ!」
「何だよもう。うるさいなぁ。」
ユーリは完全に投げやりな態度だったが、それじゃオレの気がすまねぇ。
オレは、肩に掛けていた、いい匂いのする神坂のコートをパサッとベッドに投げかけると、挑戦的な態度で、ユーリに向き合った。
「ユーリ!お前も脱げ!」
「はい??」
悠理も、横の神坂も、唖然としている。
「今からオレとユーリとで、アームレスリングをする。」
「ええっ!!」
(後編へつづく)
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