17人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
第1話 待機殺人
まさか、まさかこんな日が来ようとは!
スマホが鳴ったのはコンビニ弁当をぶら下げてようやく帰宅し、熱気と格闘しながら部屋の窓を開けた時だった。
かかってきた相手に萎えながら、スマホをそのまま窓の外へ投げ捨てたくなったが、自分の仕事まで捨てる気にもなれず電話を受けたのだった。
拷問のような暑さでじっとりと汗ばんだ体を早くシャワーで洗い流したかったのに、それもままならず、弁当を冷蔵庫へ押し込んで再び家を飛び出した。
まぁ、そんなことは日常的すぎてたいしたことはない。
ようやくあのお方と仕事ができるのだ。
緊張でさらに脇汗かいて蒸れ蒸れで、どこかでこっそりと制汗剤をシューッとスプレーしたいぐらいだけど仕方ない。
刑事たるもの、泥臭く、汗臭く、しかし、潔く。
どこで聞き知ったのか忘れたが、それがあこがれの刑事の格言とあれば、匂いなど気にしてちゃいけない。
事件現場のぼろアパートを見上げた。
いや、まだ事件とは確定できない案件だ。
だが、人が死んでいるのだ。
浮かれている場合ではないだろう。
両頬をピシャリとたたき、気合を入れる。
部屋の入り口に立っている警官に警察手帳を見せ、住人が死んでいたという一室へと足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!