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伶
十五を連れ出したことがわかって、僕はおやじ殿をはじめ、さまざまな大人に叱られた。最後におやじ殿がもう一度、僕の隣に座った。
「彼が連れ出してほしいって、君にそう言ったんだね」
「はい」
十五と僕が好き合っているというのは、二人の秘密にしておくことにした。
「彼も、そのほうがいいって」
「……君ももう大人になるころだから、話しておくよ」
それからおやじ殿が話したことは、盗み見た資料と似たようなことだった。この島では十五と似たような人が、体を治すために治療を受けていること。おやじ殿たち大人は、彼らの体を治すために、研究を続けているということ。
「彼が言っていたことですが、最後の治療を受けたら、僕と会えなくなるというのは本当ですか」
おやじ殿は曖昧に微笑んだ。大人の狡い笑みだった。
「……僕にもわからない。最後は僕よりずっと上の立場の人が、治療を終えた子を連れていくことになっているから。彼はそのことを言ったんじゃないかな」
「治療を終えた子がいるんですか」
「いや、まだ。そういうことが決まっているだけだ」
おやじ殿は僕に世間話をしに来たのではなく、処罰を伝えに来たといった。彼を連れ出したことについて、“ずっと上の立場の人”が、僕を一年間の掃除係にすると決めたという。
「一年間ですか」
「そう。明日から、一年間。休みは六日おきに一度、一日。場所の指示は追ってするそうだ」
十五の体をどうするかを僕に知らせないことも、罰に含まれたらしい。僕は十五の行方を知らない。ご飯にもならなければ、墓も作らなかった。
これから僕の部屋となる独房に、最低限の荷物を運び入れた。
十五のことは忘れない。この決意だけは、一生涯持ち続けるだろうという確信が、狭い部屋に満ちていた。
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