第六章 噂、そして隔離

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 もう、駄目だ。もう、逃げられない。この悪夢から、逃れることはできない。断頭台でギロチンを待つ哀れな罪人になった気分だった。 「力抜いてろよ」  処刑の合図に目を強く瞑ると同時に、両腕が後ろへと引かれ、後孔に今までとは比にならないほどの凄まじい衝撃と激痛が走った。 「あ゛あ゛ぁ───っ!」  ぎちぎちと押し込まれる熱に押し出されるようにして、口から絶叫が迸る。  痛い。痛い。苦しい。助けて。 「ちょ……っ、力抜けって」  赤髪の辛そうな声も、俺の耳には届かない。引く気配がない痛みと苦しさに耐えかねた脳が、ブレーカーを落とすように全ての神経を遮断しようとする。 「あ……、……っあ゛……」  痛みより先に呼吸をするための信号が途絶えたのか、息がまともに出来なくなった。酸欠状態になった頭がぐらり、と傾ぎ、視界に靄がかかり始める。  そんな俺の様子は露知らず、赤髪は更に俺の腰を掴んで、自分の方へと引き寄せた。 「う゛あぁ──……ッ!」 「きっつ……」  赤髪の肉棒が快感を得るために、俺の中で動き出す。その度に激しい痛みが俺を襲って、叫び続けた喉は声が出なくなった。辛うじて出る息の音ですら、不規則に出たり止まったりを繰り返している。  時間が経つと、俺の血なのか赤髪の先走りなのか分からない液体で、赤髪自身の動きがスムーズになった。自分を支える力すらなくなり、締め付けが緩くなったのも理由の一つかもしれない。  俺はただ放心状態で、赤髪の思うがままに揺さぶられ続けた。  男に犯されている。抵抗らしい抵抗も出来ずに。  長時間縛られた腕は感覚を失くし、自身は痛みで萎縮し、後孔は赤髪が動く度に激痛に苛まれる。  無様だった。  俺のことはお構い無しといった様相で腰を振る赤髪。俺の中で赤髪自身がどんどん大きくなっていくのが、考えることを止めた頭でさえ分かってしまう。それでも俺に出来ることはなく、ただ止めることのできない涙を流しながら、赤髪に揺すられるだけ。  背後から聞こえる呼吸が荒くなり、段々と突かれるスピードが上がってくる。一際強く腸壁を擦りあげられたとき、赤髪が低く唸った。 「っく……!」 「……っあ……」  腸内に感じたことのない熱い液体が広がる。それが何なのかは、考えなかった。
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