第六章 噂、そして隔離

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 俺の中へ一滴でも多く注ぎ込もうとしてか、何度か緩く腰を打ち付けた後、赤髪が大きく息を吐いた。  もう、終わった。地獄のような行為は。  そう思って、停止させていた思考を戻してゆっくりと目を閉じる。その直後、腰の両端をガッと掴まれる感触を覚えた。 「っ……──!」  掴まれた腰を引かれ再び勢い良く突き上げられて、衝撃で目を見開いた。いつの間にか、赤髪自身は硬さを取り戻している。俺の背中に指を這わせ、赤髪は俺の耳に顔を近付けた。 「お前が後ろだけでイくまで止めないからな……?」 「なっ……! んん……っ!」  抗議しようとした声も、掠れた喘ぎ声になる。先刻よりも肉棒は更にスムーズに動き、思考が戻ったせいか痛みより快感が勝ってくる。  嫌だ、嫌だ。男に犯されて、あまつさえ前を弄られずに達するなど不可能だ。  俺は、女じゃないのに。 「気持ちいいだろ?」  その言葉に、俺は額をシーツへ押し付けながら首を激しく振った。 「止めろ……っ!」 「お前が後ろだけでイったらな」 「無理、ぅあ、だ、ぁあ……っ」  赤髪は、何かを探すように緩く腰をグラインドさせる。 「──ぁあ゛っ! ひぁああ!」  そして、赤髪はある一点を見つけ出した。それは、狂いそうな程感じてしまったあの場所。 「ここ、前立腺って言うんだ。覚えとけ」 「やあ……っ! も、やめ、ああああっ!」  何度も固くなった肉棒でその前立腺を擦り上げられ、叫ぶように喘ぐ。視界は白く点滅して、足はガクガクと震え、自身は痛いほど張り詰めている。このままだと、本当に前を弄られずに達してしまいそうで、怖くなった。 「そろそろか」 「やだ、っ! うぁぁあっ、んんぅ……っ!」  とてつもなく強い射精感がこみ上げてくる。赤髪は突くスピードを緩めない。  このままでは、本当に。  起こり得る嫌な未来が頭をよぎったとき、赤髪の熱が前立腺を深く抉った。 「っああ゛ああああ──!」  突然の雷が落ちたような衝撃に、壊れた喉で絶叫した。 「うっ……」  少し遅れて、再び奥の方に熱いものが注ぎ込まれる。身体全体が痙攣したように震え、脳は再度思考を停止させた。  急に意識が遠退き始め、赤髪の手から解放された腰がベッドへと横向きに落ちる。薄れゆく意識の中、俺自身から白濁が噴水のように湧き出ているのが見えた。  それからの記憶は、ない。
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