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私の話
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今から遡ること二ヶ月前、関西は梅雨前線にすっぽりと覆われ、朝から大粒の雨が絶え間なくアスファルトを叩いていた。
私はその日外回りの営業に出かけていて、雨に濡れるのを気にすることも、ズボンの裾に雨が跳ねるのも気に留める余裕もなかった。
アスファルトの上に落ちた雨は形を変えて道路の上を滑り、排水口に向かって集まっていく。
私は道の少しの窪みに集まった水溜りを踏んで、前後左右に跳ね飛ばした。次の顧客の家に訪問する為に先を急いだ。
最後の家を訪問した午後九時ごろ、上司が今日の私の成果を聞くために営業車で私を迎えに来た。
一向に止む気配のない雨がフロントガラスを打擲している中、私はこの会社を退職する旨を上司に告げた。
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