残された人々を想う

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残された人々を想う

それでもいざ会社を辞めると、毎日出社していた時間通りに目覚め、同僚のことや先輩のことを思い浮かべた。 「今頃朝礼をしているな」 「今外回りに出てるだろうな」 そう思いながらそわそわと時間を持て余す。 朝礼では、その日の予定と目標を営業一課とニ課、大声で発表し合う。 元ヤン(であろう)支店長に睨まれながら 『ほんまにできんねんな!ゴラ‼︎』 と恫喝される。 それから外回り。朝から晩まで片っ端からエリアの地主の家のインターホンを押す。 警察を呼ばれることもある。 帰ってくれば、どこかの軍隊のように大声で成果報告を行う。 成果が無ければ支店長に押し倒され、髪を引っ張られて支店中を引きずり回される。 それが終われば支店長のお楽しみタイムである。 サンドバック代わりに暴行されたり、アポイントを取れなかった罰と称してドッグフードを食わされたりする。 彼らのことを思うと自分だけが戦場から逃げてきたようで自己嫌悪に陥った。
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