逢瀬

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「お疲れさんやね、遅くまで」  職場を出たところで声をかけられた。 「こんなとこで何してる?」 「んー、幼馴染みの顔を見に来た?」 「嘘をつけ」  言い捨てて歩き出すと、すぐ隣に並んでくる。 「相変わらず冷たいなぁ。久しぶりやのに」 「先週も会った気がするが?」  週に一度、東京の教室があるとかで毎週顔を見ているのだ。 「そうやね、五日も会われへんなんて長かったなあ」  そう言いながらするりと腕を絡ませようとするから、すっと一歩先に出た。カタカタと追って来た足音がまた横に並ぶ。 「ひどい……。傷つくやん」 「アホか。霞が関の往来で何をする気だ」 「歩きにくいから腕持たしてもらおうとしただけやん?」 「そんな恰好で来るからだ」
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