90人が本棚に入れています
本棚に追加
「先週末、お見合いしたんやて?」
ソファに押しつけて囁いたら、奴はぎくりと動きを止めた。
「ちょっと目ぇ離したらコレやからなぁ」
優しい手つきでシャツのボタンを外して素肌に触れた。緊張したのかすこし早い鼓動が手のひらに伝わる。
「見合いじゃない。上司の紹介で軽く食事しただけだ」
「ふうん。それで気に入ったら結婚するん?」
「するわけないだろ、知ってるくせに」
「そやな、女はあかんもんな。ほな、なんで会うたん?」
「だまし討ちみたいな? その日のうちに上司には断りを入れた」
「へえ、断ったんや? 何て言うて?」
奴は困った顔で僕を見上げている。
本気で言いたくないなら席を立つはず。
あと一押し、拗ねた口調で囁いた。
「僕には教えてくれへんの?」
そっと耳元に口づける。小さくため息が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!