逢瀬

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「先週末、お見合いしたんやて?」  ソファに押しつけて囁いたら、奴はぎくりと動きを止めた。 「ちょっと目ぇ離したらコレやからなぁ」  優しい手つきでシャツのボタンを外して素肌に触れた。緊張したのかすこし早い鼓動が手のひらに伝わる。 「見合いじゃない。上司の紹介で軽く食事しただけだ」 「ふうん。それで気に入ったら結婚するん?」 「するわけないだろ、知ってるくせに」 「そやな、女はあかんもんな。ほな、なんで会うたん?」 「だまし討ちみたいな? その日のうちに上司には断りを入れた」 「へえ、断ったんや? 何て言うて?」  奴は困った顔で僕を見上げている。  本気で言いたくないなら席を立つはず。  あと一押し、拗ねた口調で囁いた。 「僕には教えてくれへんの?」  そっと耳元に口づける。小さくため息が聞こえた。
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