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暗天星空
2。6。。51
「なんだこれは……たまげたなぁ」
そうおもわずネタを言ってしまうくらいには俺は混乱していた。
上を見ても下を見ても満天の星空が広がっている。まるで宇宙に一人投げ出されたようだ。
とは言っても手足の感覚はある。ただ視界いっぱいに広がる星空以外に自分の身体さえも見えないだけだ。
どこまで続くかわからない床、慎重にゆっくりと、摺り足で数歩歩けば壁に行き着いてしまった。
空は深く深く蒼く広がる。
何の音も聞こえず、何も見えない。ただ何かがあると言うのがわかる。
壁に手をついて歩いてみた。
確か右手を壁につけて歩き続ければ外に出れるのであったか?そんな話をラノベの主人公がヒロインに語っていた気がする。
眼下には星雲が広がっている。北極星もない。北斗七星もない。
乙女も天秤もいない。
あるのは無数に広がる星空だけ。
壁に手をつき歩くこといくらか、まだ出口は見えない。
これが夢かもしれないと考えた。
試しにほうをつねるが痛くない。
あれ、痛かったら現実なんだったか?
それから瞼を指で押さえて上にあげてみた。星空が広がっていた。
床があるならば壁もあるんじゃないかと思って歩いたら存在した。もしかしたら見えないだけで壁から離れて歩けば床に物が落ちているのではないだろうか。
そのまま歩いて探すには危険すぎると足で床の安全性を確認して四つん這いになった。これでもっと慎重に探せる。
今の自分は星空が見えるという性質はあるものの全盲、盲聾と変わらない。
目を閉じても開けても星空は見えていた。
足をちょこちょこと前進させて手を床に滑らすようになって触って何かないかと探した。
左の中指の先に何かが当たり床を滑って遠のいた。ようなきがした。
この空間にいると自覚してからどうも正気じゃない。
最初は綺麗だと思っていた星空も本能に訴えるような空恐ろしさを感じていた。
だから、指で弾いてしまったよくわからないものでもよかった。
さっきの慎重ぶりは嘘のように素早く動いてそれを確保した。
左手で掴んだのは長細い棒だった。幸いなことに触覚はある。右手で摘むように触り形状を確かめる。
長い棒の先にはチクチクした部分があり押すと弾力的で指の先で突くとほぐれる。少し硬めの毛がついた細長い棒だ。
トイレのデッキブラシではない。
棒の細さは俺の指の骨と同じくらいであろう。
これは…………歯ブラシ、か?
そう考えた時、目の前に歯ブラシが現れた。いや現れたのではない、歯ブラシが見えるようになったようだ。
ならばと思い、自らの身体を触り俺は俺だと考えても、ただ眼下には星空とピンク色の歯ブラシだけが中に固定されていた。
何故だ。
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