第1話 絶望の世界

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第1話 絶望の世界

2050年4月某日 東京都杉並区高円寺付近、辺りの建物は廃墟となり、メイン通りである青梅街道は見るも無惨に舗装は剥がれ、まるで街並みは中東の激戦地区の市街地のように荒れてしまい、平和だった頃の面影は残っていなかった。 俺の名は浅川リョウ16歳だ。普通の暮らしが出来ていれば高校にも通って友達とカラオケやファミレスに行ったり、彼女と遊園地でデートしていたかもしれない。そんな夢物語はこの世界ではおとぎ話の世界と同じ扱いだった。 俺達が物心付いたときから絶望と恐怖の世界で生き延びてきたからだ。それに俺は後2年もすれば死ぬ‥‥ というか俺という存在がなくなってしまう。 この世界から大人達が消え、残ったのは俺たち18歳未満の子供だけだ。 そして大人達は 「捕食者(イーター)」 と呼ばれる海洋生物の様な姿をした人食い魔物に変化をしてしまい、俺達の運命は元大人達のエサになるか、捕食者(イーター)になるかという究極の選択しか残されていなかった。 この日は穏やかな春の陽気に包まれ、俺は幼なじみのリクとさび付いたオープンカーを運転して杉並区内を巡回していた。  「なあリク。この先の環七防御壁(バリア)の方も巡回してみようぜ」 リクは軽く頷き環七が通っていたとされる高円寺へ向かった。環七防御壁(バリア)とは2036年に自衛隊が最後の砦として建設してくれた鉄筋コンクリート壁だ。俺達はこの壁のおかげで捕食者(イーター)からの襲撃を防ぐことが出来た。 俺は防御壁(バリア)の前へ車を止めひび割れなどが無いか隈無くチェックした。 防御壁(バリア)のコンクリートから伝わる冷たい感触が手を通じて俺の身体を刺激した。
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