高嶺の花の仮面

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高嶺の花の仮面

 私は瀬尾遥香。客観的に事実を述べると超絶美人のクォーターで完璧超人でどうしようもない廃人ヲタク。他人にはヲタクであることはばれていないのでただの高嶺の花だとみられているの。  まあ、そんなことは置いといて、今、私は彼氏である渡里(わたり)業に会いに来て隣の家まで来ている。  先日、家に来た業(心の中では同い年だし基本呼び捨て)と葵の萌え萌えが萌え萌えすぎて、最強だから別れようと思っているの。  本当に業が葵のことを好きだと気づかせてからね。  キーパーソンって本当にいいわよね!ゲームのキーパーソンは現実でも重宝されるんだもの!乙女ゲームで考えてみて?絶対にモブキャラはいつの間にか画面から外れるでしょう?悪役令嬢は追放or死亡or没落orモブ化でしょう?攻略対象じゃなくなった攻略対象者はそれはもう、主人公の悩みの種になってしかもいつの間にか若干モブ化するでしょう?でも、情報をくれるキーパーソンはモブ化しようとしてもできないし、だからと言って土俵に上がって忌み嫌われることもないの!  完璧ね! 「あれ?遥香?」 「あれ?姉さんじゃん!どうかした?」 「あ、こんにちは、業さん。少し上がってもいいでしょうか?」 「ああ。別に問題はないからいいよ」  これで上がるのを断られたらすごく困ったけど、まあ、葵も業に引っ付いてるし、ダメだなんていう訳がないわね。  というかぱっと見、もうカップルとしか言いようがないよね、その様子。バリバリ業から葵に対しての好き好き感も伝わってくるし、葵からも好き好き感が伝わってくる。  んもう!くっつけやー!って私がいるからくっつかないんじゃない。自分で言っていて阿保らしかったわ。 「それで、話したいことでもあるのか?」  さすが業。私が会いに来たってことは話があるってよくわかっているじゃない。 「ええ。でも先に葵と話してもいいですか?」 「もちろん。内緒話だったりするか?」 「いいえ。大丈夫です。聞いてくださっても大丈夫ですよ。業さんも無関係ではないので」  葵はなんだ、ばれてたのか、とでもいう顔をしている。誰がばれないと思ったのよ。わかりやっすいわよ、葵。業はよくわからないとでもいう表情をしている。 「葵。あなた、業さんのこと恋愛の意味で好きね?」 「ばれたか。まあ、そうなんだけどね」 「やっぱりね」 「は?」  流石にそう反応するか!ん!いいね!ご飯が進むわ。ありがとね、業。  葵はニコニコと笑いながら私の方を見てるし。まあ、私が邪魔だってことをこれほどかってくらいに見せつけてきたからね。やっと気づいたか馬鹿姉が、みたいなことを思ってそうね。  で、す、が!葵、あんたは主人公じゃないのよ!無自覚受けは業だからね。そこは勘違いしないでほしい。葵は表では受けぶってるけど、実際はお母さんの影響もあってバリバリの攻め。あんたはせいぜい業に認められるような努力でもしといたらどうかしら?  てか、ゲームをプレイしているような感覚ね。一つでも間違えたら即ゲームオーバー。でも、私を舐めないでほしいわ。どんなクソゲーもちゃんと完全クリアをして、それを攻略法を見ずに成し遂げた女。格闘ゲームのオンライン大会では堂々の一位。もちろん瞬殺。オンラインゲームでは鮮やかな戦いぶりから格闘ゲーム以外でも【月の戦乙女(ルナ・ワルキューレ)】セルカと呼ばれているのだから!理由としては月っぽい美しい髪(月のように美しい姿)ととてつもなく強いから、らしいわ。セルカの方は()おはるか(・・)、からよ。  そんな感じだから、私はこのゲーム(葵と業をくっつけること)を絶対にクリアしてみせる! 「まずは、葵を―――」 「姉さん?」 「あ、いや、何でもないわ。ごめんなさい」 「?」  危ない危ない。いつも攻略法を考える時、口に出しながら考えているから思わず声に出してしまったわ。業は何のことかわかっていないけど。 「それで、業さん。貴方、本当に私のことを好きですか?」 「え?何言ってるんだよ。前も行ったように俺はお前のことが好きだ」 「そうですか。……ですが、貴方は私のことを好きなようですが、貴方の学園は男子校。しかも殆どが男性同士で恋をする、と貴方が話してくださいましたよね」 「ああ。話したな。それがどうした。俺には関係ない」 「では、葵は?」 「俺は業兄さんのこと、さっきも言ったように恋愛的な意味で好きだよ!」  そう葵は言いながら業にぎゅっと抱き着く。はあ。尊い。萌え。  よし。業が動揺してきたわね。だって頭に?マークが浮かんでいるんだもの。これで私が業に葵のことを好きでしょ、と言ったらよりわからなくなってしまうわね。だから、ここでの攻略法(正攻法)は好き、について語ることだけど、私は最短距離でゴール(クリア)を目指す。よって。 「私と別れてみません?」 「え?」  あえて先に別れを切り出す。そして。 「だって、業さんのキモチ、どんなに頑張っても私の方に向いてくれないんですもの」  可愛らしく嫉妬してみる。【月の戦乙女(ルナ・ワルキューレ)】が精一杯デレるなんて殆どないからね。ゲーム内の人になんかデレたことなんてないし。 「いやいやいや!遥香のことはすごく好きだよ!ねえ!」 「業兄さん、姉さんと別れたんなら俺と付き合おーよ?」 「っ⁉⁉」  その反応いいわぁ……。葵と共同作戦っていうのが少し気にいらないけどまあ、いいでしょう。これは葵の協力なしに最短距離の攻略ができないのだから。
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