高嶺の花の仮面

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「業さん。いいんですよ?葵と付き合っても。私は貴方が葵のこと好きだ、というのがすごく伝わってきて。業さんが私のこと好きじゃないんだって思い始めて。こんな私が許せないんです」  はいここで、自分を落とすー。そうすることで罪悪感を煽ります。 「え、でも、俺は遥香のこと好きだし……」 「じゃあ、俺は?俺のこと見てドキドキしないの?」 「それ、は……」  なめるなよ、お母さんの遺伝子。攻めて攻めて攻めまくって相手をコントロールすることに長けてるんだからな。まあ、ゆずはどちらかと言うとお父さん遺伝子の方が強かったけど。 「確かに貴方から私に告白してきて。私はとても嬉しかったですけど、今の貴方の感じを見ていると業さんは葵のことが好きなように見えて。こんなことで嫉妬しちゃう私って駄目ですね……」  まあ、告白は私慣れてるし、何なら一日に一回告白されるのが日常だし。彼氏いるとか聞かれないからほっといたらなんか彼氏のいない高嶺の花みたいになったけど、業さんいたし。幸せだったけど……やっぱり萌えには逆らえないわ。 「……ああ。俺にはわからないな」 「え?」 「確かに遥香と居ると幸せな気分になるんだ。でも、最近は学校で葵の噂とか聞くと、なんかこう……もぞもぞするし……」  来たわこれ。勝利だわ。この後に私の計算だと葵の上目遣いで勝ちね。 「夏休みで葵と会えて……急にドキドキしたりとかして……もう、何が何だかわからねぇんだよ……」 「それを少しでも私に思いました?」 「ああ。付き合って最初の頃に」 「今は?」 「……あんま思わない」  グハッッッ!いやいや、わかってたけども!こう顔面偏差値の高いやつから言われるとやっぱりダメージ食らうな!一気にHPが半分くらいまでなったわ! 「なら……俺と付き合ってよ、業兄さん」 「……いいのか?」  業はこちらを見て言う。もちろん!と言いたいけども、ここは高嶺の花としのプライドというものがあるんで……まあ、かっこつけましょ。 「……ええ。業さんのお好きな通りに。……ですが、私達は所謂幼馴染。いい加減敬語を使って高嶺の花ぶるのも疲れましたので、普通にしていいですか?」 「ああ。そうだな。付き合ってからいつの間にかそんな感じになっていたけど。葵に対しての態度が普通なんだろ。そうしろよ」 「……はぁ。疲れた。学校ではいっつもこんな感じなのよ?学校の子にいつ会うかわからないし、業さんと居られるところ見られて敬語じゃない所を見られたら困ると思ってこうしてたけど……。これで幼馴染っていい訳ができるようになったわ」 「ちなみに、俺の友達には高嶺の花に振られたけど、別の高嶺の花をゲットした、って言うわ」 「⁉⁉葵、あんた、高嶺の花だったの⁉⁉」 「勝手にそうなってただけだよ。俺は知らない」  初耳なんですけど。絶対葵、王道腹黒副会長になって腐男子の食べ物にされる奴ね。あ、そう言えば今からゲームのイベントがあるじゃない!どうしよ、このまま急いで帰るのはなんか変だし、どうしよう……。 「あ、これからイベントじゃん」  ん⁉⁉業、まさか……。 「悪いんだけど、今からデス&クラフトっていうゲームでイベントがやるんだよ。それで、俺、ようやく最上位ランカーになったから憧れの【月の戦乙女(ルナ・ワルキューレ)】と組んでもらえたからさ!早くやりたくてうずうずしてるんだ!」  まって、業ってまさか、運営から名前をもらえる最上位ランカー、クラフターの二人目の【新たな破壊者(アナザー・シヴァ)】のヴァティー⁉⁉嘘でしょ⁉  私は運営から別枠でデス&クラフターって言う、ほとんど運営よりのプレイヤーなんだけども……。めっちゃ課金するプレイヤーだけど、お金も運営から貰えるって言う半分雇われなんだよね……。別に特別強化とかはされてないからそこらへんは課金したりして強くなってるんだけど……。  てか、シヴァって神様じゃん……。私、ワルキューレで神様の遣いなんですが……。なんか羨ましい……。  ちょっと、業とは別の意味で友達になりたくなってきた。だから葵にちょいちょい、と手招きし、小さい声で話しかける。 「いい⁉⁉業とはヲタトークができそうだからいい⁉⁉ヲタクって偏見なくっていい人だから!」 「……。しょうがないなぁ……俺の彼女に手を出さなければいいよ?」 「早速彼氏面しやがって」  ……ま、まあ、葵から許可はもらえたことだし、いいでしょう。 「……業。今からゲーム機持ってくるから一緒にしましょ」 「え?」 「私が、貴方が憧れている【月の戦乙女(ルナ・ワルキューレ)】よ」 「え!まじか。そんな風には全く見えなかったけど」 「そりゃ隠してたからね」  ちょーっと、ヲタクであることを利用してメタ発言でもしてみようかしら。ここでばれてたら作品の意味ないわよね。まあ、業にならばれてもいいかなとは前々から思ってたけども! 「え!じゃあ、一緒にやらね?」 「それを今、提案したけど、どう?」 「やる!!!」  業はキラッキラな笑顔を私に向ける。そんな笑顔私と付き合ってるときには見てないぞ。 「じゃあ、失礼するわね」  私はそう言って渡里家を後にする。ゲーム機を取りに行って……業とゲームかぁ……。楽しみだわ……。ついでに葵との萌えも見れるだろうし……。はあ。尊い。
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