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結果から言うと文化祭は最高に盛り上がった。
ちなみに私たちのクラスのゲームの内容としてはSRPG。さらわれた姫を助けるというだけのありきたりなストーリー。そして、コンピューターと二回戦い、最後にクラスの代表者と戦うという物。一応、キャラ選択、技選択までは出来る。もちろん、代表者もその中から技を選んで戦うのが決まり。
私はもちろん当日に倒れたふりをし、学校を休んだことになっている。実際には来ているのだけれど。
そして私は【月の戦乙女】として文化祭を楽しんだ。もちろん、【今日、私は文化祭の出し物のビデオゲームの最高難易度のボスとして参加します!ぜひ来てくださいね!】と某SNSで呟くのも忘れずに。
もちろん、最高難易度のコンピューターなど、作るのが難しすぎるので、コンピューターは操作を覚える用。難易度はすべての度合いで一緒だ。つまり、ゲームの難しさはボス役で決まるというわけだ。
ということで今の私の格好はと言うと、いつも学校ではおろしている髪を高く結い上げ、前髪で右目を隠す。いつもは流しているから分からないが、普段の前髪は鼻の下ほどまであるので目を隠せるのだ。さらに赤のカラコンを着用し、袖が少し長めの白いワンピースとその上に黒い上着を羽織る。そして生足に黒いヒールのサンダル。顔には黒いマスクと水色のイヤリングをした。(急いでまじで使えないタブレット描いたので手抜きの挿絵)
一応、この姿の私が【月の戦乙女】だとはヲタクには知られている。見た目はすごく誤魔化せるのだ。だが、何度声が瀬尾さんに似てる、と言われたことか。気を抜くと高嶺の花モードの声の高さになるのよ。それがバレそうでバレそうで。
業と葵が来たときはまじで泣きそうになりました。だって、勝てるけど、強いんだもん。瞬殺できないんだもん。私が強化されてるんじゃなくて、RPGゲームって言うのは頭脳戦だから一個選択を間違えれば負けるの。もちろんボス側の利点は相手の技を見てから自分の技を選べるところなんだけど、それでも強さ的には差がないから強い人が来ると勝てるけど、時間がかかっちゃう。
技の出し合いのゲームは所謂、将棋みたいなもんだからさ、最短でも二ターンはかかっちゃうの。ワンパンとかできないの。だからね、私、ほとんど休みなしだったんだよ。大変だった。しかもそれが二日連続。バレないようにするのと行列ができないようにするの大変だったんだから。
「【月の戦乙女】様!」
そんなこんなで私はクラスから様付で呼ばれている。恥ずかしいから本当にやめてほしい。
「どうかした?何度も言うけど、僕のことはセルカと呼んで」
「じゃあ、セルカ様ね!今度、打ち上げやろうって話してるんですけど、来ませんか?セルカ様のおかげで私たちのクラス、大繁盛だったんですから!あと、その時だったらクラスの中心になって色々やりくりしていた学級委員の瀬尾さんに会えると思うし!」
これ断らないとやばいことになるわー。一人で二役なんてさすがの私でもできないわよ。
「瀬尾さんはね!高嶺の花で!全員に均等に優しくて、とってもきれいなんです!セルカ様は優しくてきれいでフレンドリーで!瀬尾さんと会ったら気が合うだろうなー」
気が合うも何も。完全に一致しているんで合わないわけがないじゃない。合わなかったら私、多重人格になってます。
「へー、そんな人がいるんだね。でも、僕、意外に忙しいんだよ?ヲタクとはいえ、仕事でヲタクしてたりするんだから」
嘘です。めっちゃナチュラルにヲタクです。忙しいのは学校があるからです。
「えー。そうなんですねー。少し寂しいなー」
「え!やっぱり無理だった⁉」
「うんー。忙しいんだってさ」
意外にクラスの皆がセルカの私に懐いてくれたのを見て話したいんだけどってさっきから思ってるんだけど、その度に葵の俺の話を聞きたければ黙れ、という言葉が私の頭に響く。
「【月の戦乙女】様打ち上げ無理なんですか!」
そう話しかけてきたのは私を雇おうと言い出したクラスの男子。確か二つ名は【疾風の暗殺者】だったような。
「【疾風の暗殺者】くん、だよね?僕のことはセルカと呼んで」
「そうです!セルカ様、本当に無理なんですか?」
「うん。他のゲームのイベントとかオフ会があるからどうしても無理なんだ」
「そうですか……。残念ですね……」
本当に残念そうにしてると心が痛いわ。でも、しょうがない。バレてしまうわ。これ以上一緒に居たら。
「じゃあ、僕はこれで失礼するよ。楽しい文化祭をありがとね」
「セルカ様!ありがとうございましたッ!」
ワオ。めっちゃ綺麗なお辞儀。ぴったり九十度の角度で頭を下げてくれてるわ。
「どういたしまして。そして……また、会う日まで」
おっし!セルカの決め台詞を言えたわ!かっこよく!
そしてそのまま、私は教室から立ち去った。外に出るとまだ残っていたゲーマーたちが私の気を引こうと夢中になって話しかけてくるけど、同時に回答できないから。口は一個しかないし。(聞こえてないとは言っていない)
「皆さん。お疲れ様でした。縁があれば、また会いましょう」
これで完璧ね。わざわざ話しかけてくるような奴はいないはず。
「セルカ!」
何で業出てくるかなぁ!いい感じに終わりそうだったのに!
「何?ヴァティー」
「この後やらない?ペアマッチで!」
「いいよ」
周りの人間はぽかんと口を開けている。まあ、デス&クラフトのトップスリー全員がそろっているのだから。
「あおっ……セオイもやる?」
そう、三人目は実は葵。意外に多趣味なやつなんだ。私が勧めたらどぶりやがって。もちろん名前の由来はせおあおい。
「うん!俺もやる!」
「じゃあ、グループマッチだね。だとすると一人足りないから、もし時間が空いていれば今日、僕を此処に呼んでくれた【疾風の暗殺者】くんはどう?割と出来る子だったはずだし、チームバランスもいいと思う」
「そうするか。だったら八時、広場集合で!」
「りょーかい」
「了解」
二人は自らの寮に戻り、私は家への帰路へと着く。ただ、ストーカーでもされてたら困るからめっちゃ遠回りして、撒こう。屋根を伝って帰ろうかしら。
その後、めちゃめちゃゲームした。
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