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イケメン生徒会庶務の仮面
業兄さんと付き合って二か月。もう、尊いとしか言えない。業兄さん可愛すぎ。なんであんなに可愛いのかわからないくらい可愛すぎ。
「瀬尾様の御登校だぞ!」
誰かが俺を見つけてそんなことを叫ぶ男が一人。それに反応して黄色い声上げる男が見える範囲すべての人。
「待て!近づくな!今日も隣には……やっぱり!渡里様もいらっしゃるぞ!」
下駄箱の場所が違うからいつも遅れて登場してくる業兄さん可愛い。焦ってるその顔まじ可愛い。
「あの!渡里副委員長様!少しおはな―――」
「馬鹿なのですか?俺の恋人に何話しかけようとしてるのですか?だったら俺もその話に付き合ってもいいでしょうか?」
「ちょっと待て、葵!こいつは委員会の書記だ!たぶん委員会関係の話だから!」
「あ、そうなんですか!すみませんね?業兄さんに変な虫でも付いたら困るので、ねぇ?」
ちょっと焦ってる業兄さん可愛い。でも、俺を傷つけることができなくてどうしようと思って戸惑ってる業兄さん可愛い。
と、ここまで業兄さんの可愛さについて語ってきたわけだけど、どうしよう。変なやつだと思われてないかな。
「きょ、今日も瀬尾様の毒が美しいッッッ!ぼ、僕にそれが向けられるなんてッッッ!瀬尾様好きですぅッッッ!」
「グハッッッ⁉」
なんか、急に抱き着かれたんだけど。しかもかなりの勢いがあって倒れそうだったんだけど。え?何か用があったんじゃないのこいつ。業兄さんに。
「ちょっと離れてください」
「な!ちょっと、成瀬!離れろ!」
「いやですッッッ!この機会を逃しません!」
こいつ、成瀬……。ああ。風紀委員会書記の柱成瀬か……。名前が名字っぽいって話題になった、あの。
「は・な・れ・て・く・だ・さ・い」
「い・や・で・す」
「んだとボケ」
「え?」
あ、口が滑った。でも、柱が俺から離れないのがいけない。ちょっと頭おかしいんじゃないのか?業兄さんに話があったんじゃないの?
「おい、成瀬。葵から離れろ。でないと俺がお前を殺してしまう」
「あ……すみません離れます」
するりと俺の身体から腕を離した柱は若干怯えながら業兄さんの方を向く。何か、業兄さんやらかしたんだろうか、柱に。でも、業兄さんの嫉妬している姿まじ可愛い。
「渡里副委員長様。僕はこの書類を私に来たんです。では、失礼しますっ!」
柱は業兄さんに書類だけぐいと渡し、廊下をダッシュで駆けていく。本当に、業兄さん何をしたのだろう。
「業兄さん!行こ?」
「そうだな。行くか」
若干怒り気味な業兄さんの腕を掴み、俺はとことこと歩く。うん。引っ張られている業兄さんも可愛い。
ちなみに俺が世間に隠しているのは行き過ぎた恋愛感情と一部を除いて腐男子であること。普通にそこらでこの学園の男子がしているような恋愛くらいは俺はする。と言うか俺は完全にそっちサイドなので、実際腐男子であることと、ゲーマーであることしか隠していない。
業兄さんが可愛いのはしょうがない。誰が何と言おうと可愛いのだからしょうがない。
「……妬いてる業兄さんって可愛いな」
「っんな……!……葵も可愛いよ?」
あ、動揺してすぐに隠した業兄さん可愛い。可愛いだなんて言われ慣れてないのかな?すっごく可愛いから本当のことなんだけど。
そして俺らはそれぞれの教室へと向かう中間地点の階段で別れた。今日も業兄さんは可愛かった。
「せ、瀬尾様!」
教室に入ると急にクラスメイトに話しかけられた。
「何ですか?」
「先程生徒会長様と風紀委員長様がおいでになられて、その、瀬尾様に今すぐ生徒会室に行くように、と」
「伝えてくれてありがとうございます。では先生にはそのようにお伝えください」
「は、はい!」
あの子誰だっけ。同じクラスの子だけど、あんまり覚えてないわ。ごめんね、A君。
と言うか、呼び出しって絶対あの件だよね。めんどくさ……。絶対母さんに丸投げされるやつでしょ……。だって姉さんもそうされたって言ってたし……。
そう思いながら俺はとぼとぼと生徒会室に行った。これで母さんがいたらなぁ……また立案で呼び出しだし……。何回このやり取りをしたことか……。
「おい。遅いぞ、葵」
「すみませんね、会長」
そこにいたのは生徒会長と風紀委員長だけだった。理事長は今日はいないのか。
「案はあれで学校側は決定としたそうだ」
「だったら何で呼び出しを」
「それは、引継ぎの話だ」
「引継ぎ……?」
引継ぎって何のこと?最近庶務になったばかりなんですけど俺。
「お前を副会長にするため、だ」
「それは人気投票で決まるのでは?」
「その速報が今朝出たんだ。五月に正式のが出るが、お前は副会長になるであろう」
風紀委員長が俺にそう言う。いや、まだ十月ですけど。速報出るの速すぎるし、何なら引継ぎの時期にしても早すぎると思うんですが。
「なぜ、今の時期に?」
「覚えることが多すぎるのだ」
「ふざけんな」
「今なんか言ったか?」
「イッテナイデス」
また、本性が出てしまった。危ない。イケメンな爽やか~な人間でいようとしたのに。オラオラ系が出てしまった。
「まあ、いい。引継ぎの書類がこれだ。読んどけ」
「わかりました。それより他の用事もあるんですよね。でなければ風紀委員長は必要ないかと」
「よくわかったな」
風紀委員長はその鉄仮面の顔をにへらと崩し、俺の方を向く。待ってこの顔ってまさかだけどいつもの奴……?
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