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「新作は。新しいテレビ番組作ってるんだろ、瀬尾さん。新作の情報を」
やっぱりかーーーー!この人プロデューサーの母さんのこと大好きなんだよなーーー!才能があってプロデュースという名を借りてコンサルティングしてる母さんだけど、母さんの番組にこんな信者がいたなんてこの学校来るまでは知らなかったし!
「し、新作ですか……?」
「そうだ。新しいテレビ番組。瀬尾さんのツイツイで新作のプロデュースやらせていただきますって言うのを見たからな。でも、ツイツイにはどういう新作か全く呟いてくれない」
当り前でしょう。新作なんて極秘事項に決まってるんですから。
「お、俺は知りません。新作関係の情報は隠さないといけないですから、ばれてしまえば母が怒られてしまうでしょう。そこまで気になるのならば今度来るのですからその時に質問してみればいかかでしょう」
「ちょ、直接話せるか!この前は一ファンとして話していないから何とか持ちこたえたが、ファンとしてどのように接するのがいいのか!私にはまったくわからない!」
あ、あの……引いてますよ、生徒会長さんが。僕も、イケメン生徒会庶務の肩書が無ければ、今すぐ会長のような顔をしたい。だってそっちの方が楽だもの。
誰にでも優しくて、心が広いイケメン生徒会庶務って決めつけられたせいで、俺は俺として生きられるのが半分になった!仮面をはがされたらすごく困るからしょうがないんだけど!
「そうなんですか。俺はそのような経験がないものでして。変なことを言ってしまい、申し訳ありません。であれば、今度聞いてみますね。新作はどういう物なのか」
「本当か!!!ありがとう!」
「それより、お前、業と付き合ってる―――」
「はいそうですが何か業兄さんに関わろうとするならば即切り捨てますけど何か」
会長が余計な口をはさんできたのですごく早口でしかも食い気味に答えてしまったが、まあいいだろう。
「いや、何があって高嶺の花である寮外の女子生徒と付き合っている業を強奪できたのか、ついでに女子生徒の名前を知っているなら教えてほしい」
いやぁ、姉からとったなんて言えませんよねぇー普通。爽やか笑顔で固定しているこの顔が壊れそうなんですけど。どうしてくれるんですか。
「え、えっとぉ……」
いや、言えばいいのか。それで今、(姉はゲームに夢中で)彼氏募集中じゃないんで、って言えばいいのか。なるほど。
「実は姉の元カレでして。いろいろあって姉が僕に譲ってくれたと言いますか」
「ほう?ならば姉を紹介しろ」
「するかボケ」
「え?」
「あ、なんでもないです」
また本性が出てしまった。今の姉を紹介したらヲタクモード全開で付き合おうとしそうでだめだ、絶対。
「えっと、姉は今、彼氏募集中じゃないらしく……紹介しろと言われましても困ると言いますか……」
「ふうん……。葵のせいなんじゃねぇの?」
「ちゃうわボケ」
「は?」
「あ、いや、何でもないです」
今日、ポカやらかしまくってんな、俺。ちゃんとしっかりしないと。業と居るとどうしても気がゆるんじゃうからな。
「えっと、それより、例のゲームどうなんですか。生徒会長が珍しくはまったって言うゲーム。確か、デス&クラフトでしたよね?」
ここであえて俺が本性が出やすい身内の話ではなくゲームの話をすることで危機を回避しよう。でないと終わる。
「ああ、あれか。一応上位ランカーにはなったな」
これだから何でもできる生徒会長ってずるいよなぁ。いつの間にか上位八人に入ってるし。
「だから……【月の戦乙女】にナンパかけてみたんだけどな……。失敗した。『僕、そう言うの無理だから』って」
「はぁ……それはそうでしょうね。あの人、そう言うの興味ないガチヲタクらしいので」
実は上位三人が業と俺と俺の姉で、トッププレイヤーが業の元カノだとは思ってないだろうなぁ……。
「かく言うお前は【月の戦乙女】とは何もないのかよ」
「あるわけがないじゃないですか。業兄さんがいますし。僕はあくまで趣味の一環です。そんな私情を持ち込むほど馬鹿じゃないです。しかも女キャラで生きてるので関係ないかと」
「お前はすべてにおいてイケメンだから何でもできるんだろうなぁ。女子キャラにした理由も女子にナンパひっかけるような輩を皆殺しにする、だったっけな?」
「そうですね。ナンパして問題起こして解決しろと言われる側のことも考えてほしいものですよ。そして俺より会長の方がイケメンなので。俺を馬鹿にしないでもらえますか。ちなみに二つ名は」
「【永遠の貴公子】」
「……っ」
あっぶねぇ。爆笑するとこだった。風紀委員長は爆笑してるし。それを見て赤面する会長うまうま。でも、それはないでしょう。永遠の貴公子って貴方ずっとかっこいい王子様でいるつもりなんですかって話。
「お前、ずっと王子様でいるつもりなのか……ッ!最高に面白い!」
「これは運営が勝手に決めるんだよ!俺は関係ねぇ!正直、この二つ名俺は嫌いなんだよ!」
「……ッ。……こほん。その方は確か昨日、俺が戦闘不能にした記憶があります」
「ああ!やられたさ!セオイってやつになぁ!」
「あはははッ!葵にボコボコにされたようだね!最高に面白い!」
あ、待って。この状態最高にいい。若干涙目になりながら恥ずかしがって委員長にのって黙らせようとする会長と珍しく腹を抱えて爆笑して顔が赤くなって涙目になってる委員長。
え。萌えるんですけど。萌え尽きますよ?
それより顔面破壊しそうで怖いんだが。爽やかスマイルが消え去り、腐男子顔になってないだろうか。
「……え、えっと……僕は用済みですか……?」
「くふふふふッ!……あ、終わりだ。帰っていいぞ」
「……後でぶっ殺す」
「……会長。こちらこそ。では失礼しました」
よし。これから一人でこの資料を読みふけることができる。無事、今日もバレるのを回避できそうだ。
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