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「まんまとしてやられたわね」
「そうね」
そう。葵は見事に逃げたのだ。確実に業と凛音の宅では葵はめちゃくちゃに溺愛されている。本当の子供のように。葵は愛され体質なのだ。
つまり、あえて、自分が家族の萌えになることでめんどくさいカップル十組分の説明をチャラにしたのだ。たぶん、葵はもう帰ってこない。業が寮に戻る時に一緒に寮に戻るだろう。
「まあ、いいわ。萌えを提供してもらったのは事実だから」
「それよりどうなのだ。我が姉よ。お前の永遠に添い遂げる予定の輩とは別れないのか。あれは相思相愛であるぞ」
「そこが問題なのよ……。私は業さんとは別れたくないわ。でも、あの二人の萌えにはすごく興味があるのよ……。葵はああ見えてお母さんのドSを引き継いで攻め要員でしょ?それで圧倒的攻めの業さんが絶対的攻めの葵に堕ちるのが妄想だけでもとても萌えて……。それをリアルに見てみたいのよね……」
「私的には別れた方がいいわよ。だって、あの業君の様子を見てると、完全に葵にやられてるわよ。本人は気づいていないようだけど」
「そうよね……。明日、別れを切り出してみようかしら。業さん、貴方、葵のこと好きでしょって。そしたら私が業さんの本当の想いを気づかせるいわゆるキーパーソンになるのよね⁉⁉それはとても嬉しいことだわ!」
遥香はテンションが急に上がっていき、そのまま、自らの部屋へ上がっていった。その勢いのまま、ゲームの素材集めに専念するようだ。
「では、俺も我がルームに戻る。禁忌の物などもあるから絶対に入ってくるなよ。これはお前らのことを思って言っているのだ。必ず守れ」
そういって、柚子葉も部屋へと戻っていく。
「そろそろビッグサイズのパーカーがなくなるのよね。あの子がすぐ破くから」
「前髪ものびのびだったな」
「前髪はいいのよ。あの子なぜか学校に行く時だけ前髪は耳にかけるんだから。パーカーは手のひらからニ十センチも長いのしか着ないんだもの。どうしようかしら……」
「そっちより遥香の課金じゃない?心配するの」
「それも必要だわ……」
いや。お金の心配なんてしなくても大丈夫だよ、瀬尾家。敏腕弁護士のカインと敏腕プロデューサーの叶恵がいるんだから、めちゃくちゃお金入ってるよ。ちなみに叶恵がプロデュースしてるの子供が通ってるそれぞれの学校だからね。金持ちだよ、君ら。
「もう、いいわ。私はお風呂に入って寝ます。貴方は適当にしときなさい」
「そうするよ、ママ」
そういって二人はそれぞれ部屋に戻ったり、お風呂に入ったりしに行く。
リビングにはようやく静寂が訪れた。
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