敏腕プロデューサーの仮面

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敏腕プロデューサーの仮面

「ああ。それね。了解。ほっといて。うん。別にいいわ。その客。お金払う様子ないし。催促してきたときに金払えって言っとくのよ。うん。じゃあね」  私は瀬尾叶恵。企業のプロデュースをしている、いわゆる敏腕プロデューサー。なぜ、自分から敏腕って言うかって?でなきゃ仕事がこんなに大量に入るもんですか。学校だけでも十校は抱えていて、それが企業となれば一か月契約で少なくてもニ十企業は依頼が来るわ。  時にテレビの取材とかも来るけど、そんなのお断りに決まってるじゃない。わざわざ、考案の時間を撮影されることに回していたら、私の仕事を奪う輩が現れるだけじゃないし、一度テレビに出るだけでお金だけじゃなく取材依頼も殺到する。そんなんになったら仕事どころじゃなくなるわ。  宣伝だ、っていう人もいるでしょうけど、そんなの転職した人が私の評判を勝手に広めてくれるから勝手に仕事は集まる。面白可笑しく報道するテレビより、現場の人が伝えてくれた方が信憑性が高い。  だからテレビ関連の仕事だと、番組特別プロデューサーとしてちょろっと関わるだけ。もちろん、私が画面上に登場するわけでもないし、何なら声すらも登場させない。そこはプロの芸能人に任せた方が成功するもの。 「瀬尾さん!」 「あら。どうかした?」 「私立アルファ学園から面会の問い合わせが来ました!今日、なるべく早くがいいとのことです!」 「わかったわ。すぐ行きます、と連絡して頂戴。その代わり、私の分の書類整理頼んだわよ」 「はい!失礼します!」  私の経営するセオロス社(瀬尾(・・)()デュー())は一応、従業員を何人か抱えている。夫であるカインの事務所は形だけの事務所で実際のところカイン一人で運営している。だから、私が形だけの従業員として瀬尾弁護士事務所に所属している。まあ、弁護士の資格は持っているのでね。  ただ、従業員にプロデュースを任せるのではなく、あくまで彼らは私までの連絡係。全部仕事は私が行っている。ただ、私は仕事中であるときが多いから、仕事の請負は従業員に任せている。書類なども大量に向こうから送られてくるが、仕事に必要なもの不必要なものなどがあるにも関わらず、全部送ってきたりするので、その仕分けも任せていたりする。それが最初の電話だったり、先程の連絡だったりするのだ。 「まさか、ほとんどお呼び出しの来ない、葵の学園ね。久しぶりだわ。ついでに葵のところに寄ってみようかしら」  私立アルファ学園。そこは葵の通っている全寮制男子高校である。一応私はそこのプロデュースを受けているのだが、ほとんどのプロデュースが電話とファックスで終わる、物わかり良い学校なのだ。しかし、今回はそうはと行かないご様子。少し気を引き締めていかなくちゃ。  しばらくして学園に着いた。山奥にある、いわゆる王道学園であるため、実はものすごくワクワクである。そこら中に男子しかいないのって私たちにとっては至福じゃないかしら。妄想のし甲斐があるってものよ。 「あ、かーーさーん!」  遠くから声が聞こえる。葵の声だ。 「葵?なんで葵がここに?」 「僕ら生徒会が直訴して母さんを呼んだからね。僕らが迎えに行かないといけなくて」 「あらそう。生徒会が直訴って中々なことも起こるものね。でも、あなたなら私はここに来る暇なんてない、と思わなかったのかしら」 「そうだけど!今回はちょっと助力が欲しくて」  私の息子が助けが欲しいって厄介な事案かもしれないわ。なぜなら、カインと私の血を引き継いだ者だもの。王道学園であるから他の生徒会のメンバーも素晴らしい人であるはず。葵もそう言っていたし。 「そうなのね。じゃあ、案内を頼むわ」 「生徒会室まで」 「かしこまりました。この車にご乗車を」  相変わらず、お金がかかっていること。学園が広いからか、タクシーのようなものが学園内には走っている。まあ、生徒はお金を払わなくていいし、私は招かれた客だからお金なんて取らない。だからタクシーのようなもの。決してタクシーではない。
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