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しゃっくりが止まらない。
数時間どころの騒ぎではない。もう一週間になる。この一週間、僕はしゃっくりが止まらない。
朝起きるたびに、今日こそは止まっているだろうと期待するが、その数分後には見事に期待を裏切られる。なにかの病気ではないかと、病院で検査もした。結果は異状なし。原因は不明ときた。放っておけば、いずれ止まるでしょう。医者は言った。しかし、着実に体力も落ちてきている。放っておく気にもなれず、僕はなんとか止めようと、ありとあらゆる方法を試した。それでも僕のしゃっくりは止まらない。
さすがに、辛そうな僕を見かねて友人たちが協力を申し出てくれた。
「しゃっくりを止めるのに一番良い方法は驚くことだ」
友人の一人が言う。
「昔から言うだろう?」
「言うけど、本当なのかな」
「長く言い伝えられていることっていうのは、長く言い伝えられるだけの何かがあるんだよ」
大して根拠にもならないようなことを、何故か自信満々に言ってくる友人をいぶかしがりながらも、物は試しと協力を仰いだ。
「……わっ!!」
……驚かない。突然大声を出した友人を冷静に見つめた。
そもそも、驚かせると宣言した直後、大声を出して直接的に驚かそうとしたところでいったい誰が驚くのか。
……ヒック!
僕のしゃっくりは止まらない。
僕は友人にお礼を言い、その場を後にした。
とはいえ、友人のやり方は感心しなかったものの、僕の中ではやはりこの方法しかないのかもしれないという思いも浮かんでいた。というのも、様々な方法を試したが、実は驚くということだけはまだやっていなかった。正確には、試そうとしたが驚くようなことがなかったのだ。ちゃんと驚くことができれば、しゃっくりも止められるかもしれない。誰か僕を驚かせてはくれないものだろうか。
僕は携帯を取り出し、しゃっくりが止まらないことについて調べる。しゃっくりが出続けると死ぬなんていう話も出てきた。
驚きはしない。
一週間続いただけでもこの体力の落ちようだ。これがさらに何年も続けば死ぬことだってあるかもしれない。
その一方でギネスに登録されている人は、68年間しゃっくりをしたまま生き続けたという。
驚きはしない。
既に自分も止まらなくなって一週間だ。これを4回繰り返せば一か月、更にそれを12回繰り返せば一年、そしてそれが68回繰り返せば68年だ。そんなに遠い年月ではないだろう。
……僕はおかしなことを言っているだろうか。なんだか頭がぼおっとしてきた。どうやら早く止めなくては少しマズそうだ。
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