1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
次の瞬間、病室の天井が見えた。
「詩織、ようやく目が覚めたんだな!?」
声のする方を見ると、私の横で主人が泣きながら、私の手を握っていた。
「・・・ここは?」
私は朦朧とする意識の中口を開いた。
「ここは病室で、お前赤ん坊を産んだ後、丸2日も目を覚まさなかったんだぞ。」
・・・2日!?そんなに??
私は思わず耳を疑った。
先ほどの出来事はほんの数分のことだったはず。
それなのに2日間も意識を失っていたのだ。
「赤ちゃんは?赤ちゃんは無事なの?」
聞くと主人は涙を拭いながら言った。
「ああ、どこも異常はないって。元気な女の子だって・・。」
主人の言葉を聞いて心底安心した。
赤ちゃん、無事だったんだ・・・・。良かった・・。
「赤ん坊は無事だったんだけど、お前は出血が酷くて。もうだめかもしれないって医師から言われたんだ・・。でも、意識を取り戻してくれて本当に良かった・・。」
主人の言葉を聞いて、私は自分が死にかけたということをようやく理解した。
つまり臨死体験しちゃったって事なのかな?
だとしたら、あの“声”は誰の声だったんだろう・・?
私を救ってくれた女性は・・・?
私はぼんやりとしながら、あの女性の“声”を思い出していた。
そして数日が経ち、私の体調も大分回復した。
赤ちゃんには春に産まれたということから“サクラ”と名付けた。
そして、体も大分回復した頃病室でサクラを抱っこしていたところに、母が見舞いに来た。
「本当にあんたが無事でよかった。サクラも元気に育ってくれてるみたいだし。」
「うん。お母さん心配かけてごめんね・・。」
「何言ってんのよ。」
普段は恥ずかしくて言えない言葉もさらっと口にできた。
母は少し照れ臭そうだった。
「そういえばね、この前あんた言ってたでしょ?私があんたを産んだとき女の人の“声”が聞こえたって話。」
「うん。」
「あの声ね、考えてみればあんたの声にそっくりだったんだよね・・・。」
「・・・え・・・?」
「もしかしたら未来のあんたが、あのとき私を助けてくれたのかもしれないね。」
母は嬉しそうに微笑みながら言った。
一方私は自分の腕に抱かれているサクラを見つめていた。
・・もしかして、あのときの声は・・・。
私は愛おしい我が子を思いっきり抱きしめた。
「それにしてもサクラは本当に可愛いね~。」
母はサクラの頬っぺたをツンツンとつついた。
「・・・あのね、母さん実はね・・・。」
いつかこの子が大きくなったらこの子にも話そう。
私がお母さんの命を救って、今度はあなたが私の命を救ってくれた。
こうやって、命のバトンは受け継がれてゆくのかもしれない。
窓の外を見ると、桜の花が満開に咲いていた。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!