私を呼ぶ声

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次の瞬間、病室の天井が見えた。 「詩織、ようやく目が覚めたんだな!?」 声のする方を見ると、私の横で主人が泣きながら、私の手を握っていた。 「・・・ここは?」 私は朦朧とする意識の中口を開いた。 「ここは病室で、お前赤ん坊を産んだ後、丸2日も目を覚まさなかったんだぞ。」 ・・・2日!?そんなに?? 私は思わず耳を疑った。 先ほどの出来事はほんの数分のことだったはず。 それなのに2日間も意識を失っていたのだ。 「赤ちゃんは?赤ちゃんは無事なの?」 聞くと主人は涙を拭いながら言った。 「ああ、どこも異常はないって。元気な女の子だって・・。」 主人の言葉を聞いて心底安心した。 赤ちゃん、無事だったんだ・・・・。良かった・・。 「赤ん坊は無事だったんだけど、お前は出血が酷くて。もうだめかもしれないって医師から言われたんだ・・。でも、意識を取り戻してくれて本当に良かった・・。」 主人の言葉を聞いて、私は自分が死にかけたということをようやく理解した。 つまり臨死体験しちゃったって事なのかな? だとしたら、あの“声”は誰の声だったんだろう・・? 私を救ってくれた女性は・・・? 私はぼんやりとしながら、あの女性の“声”を思い出していた。 そして数日が経ち、私の体調も大分回復した。 赤ちゃんには春に産まれたということから“サクラ”と名付けた。 そして、体も大分回復した頃病室でサクラを抱っこしていたところに、母が見舞いに来た。 「本当にあんたが無事でよかった。サクラも元気に育ってくれてるみたいだし。」 「うん。お母さん心配かけてごめんね・・。」 「何言ってんのよ。」 普段は恥ずかしくて言えない言葉もさらっと口にできた。 母は少し照れ臭そうだった。 「そういえばね、この前あんた言ってたでしょ?私があんたを産んだとき女の人の“声”が聞こえたって話。」 「うん。」 「あの声ね、考えてみればあんたの声にそっくりだったんだよね・・・。」 「・・・え・・・?」 「もしかしたら未来のあんたが、あのとき私を助けてくれたのかもしれないね。」 母は嬉しそうに微笑みながら言った。 一方私は自分の腕に抱かれているサクラを見つめていた。 ・・もしかして、あのときの声は・・・。 私は愛おしい我が子を思いっきり抱きしめた。 「それにしてもサクラは本当に可愛いね~。」 母はサクラの頬っぺたをツンツンとつついた。 「・・・あのね、母さん実はね・・・。」 いつかこの子が大きくなったらこの子にも話そう。 私がお母さんの命を救って、今度はあなたが私の命を救ってくれた。 こうやって、命のバトンは受け継がれてゆくのかもしれない。 窓の外を見ると、桜の花が満開に咲いていた。                                      終わり
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