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そして職場に戻ると案の定禿じいの罵声が飛んできた。
「木島!綾瀬!一服なんかしてる暇あったら契約の一件でもとってこい!!」
ああ、また始まったよ。別に一服位いいじゃんか、こっちは毎日残業して働いてんだから。
せっかくイライラを落ち着かせるために一服しに行ったのに、またイライラさせられてしまった。
あの禿じじい!さっさと癌が悪化して死んじまえ!!
心の中で思いっきり叫んだ。
そして次の日、俺はいつものように屋上で一服していた。
昨日も遅くまで残業で疲れた。
というか、毎日毎日朝から晩まで働いて。
これからもずっとこんな生活続くのか?
マジ最悪。やってらんね~。
あ~あ、学生の頃に戻てぇな~。
そんなことを考えていると、屋上へ入る扉を開ける音がした。
はっとして振り返ると、そこにいたのは。
うわっ!禿じい!最悪だよ、また文句言われるよ・・・・。
「何だ、その顔は、また俺に文句でも言われると思ったのか・・?」
エスパーかよ!?と思う位当たっていた。
「お前らの考えてることなんて大体想像がつく、大方綾瀬と毎日この屋上で俺の悪口でも言ってるんだろう・・・。」
「いえ、まさかそんなことありえません。」
「嘘つくな。何年生きてると思ってるんだ。」
何も言えずにいると、禿じいは自身のポケットから出したタバコに火をつけた。
「いいんですか?タバコなんか吸っても?」
俺の顔をじろりと睨むと、禿じいはため息をついた。
「綾瀬から聞いたんだろう?俺の病気の事?」
「・・・はい・・・。」
禿じいはタバコの煙を吐きながら言った。
「この前の検査でな、また異常が見つかったんだよ。だからまた、しばらく入院することになった。今度は長いかもな・・・。」
「・・・そうなんですか・・・。」
「木島、お前は今の仕事を一生やっていきたいと思うか?」
「・・・え・・?」
「人生ってのは案外長いようで短い。今日のような明日が永遠に続くと思うな、いつかは必ず終わりが来る。そのときどう思うかが重要だ。」
「・・・はい・・・。」
「人間ってのはいくつになっても死ぬ勇気なんてありゃあしねぇよ。俺の年になっても、こんな病気になっちまってもまだ、生きたいって思う。お前位若けりゃまだ分からないと思うがな・・・。俺はまだまだ諦めないからな・・・。」
俺はこのとき禿じいの言いたいことがよく分からなかった。
「俺は明日からまた入院する。しばらくの間会社には来れないがよろしく頼んだぞ。」
そう言い残すと禿じいはタバコの火を消して、屋上から去って行った。
そして、本当に翌日から会社に来なくなった。
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